エピソード・1

(宇宙旅行はロードスターに乗って・続編)

 

私が遭遇した最も凶暴と言うか、凶悪な種族(知能、体力とも人類を圧倒していたがとても人類とは言えないので、猿人(えんじん)と言うことにする)は高橋さんにもお話したバーリ・オバサン星群に住む?????猿人で、例によって我々の言語では発音不可能なので、仮に、オバサン猿人(えんじん)としておこう。

 地上でも、おばさんは始末におえない人が多いが、このオバサン猿人はその比ではない。背丈は優に3mを超え、高いものは4m近くの者もいる。男女の区別はなく繁殖は有機合成に近い方法で行われるらしい。

 あえて言えば、人造人間とでも言えようが、体形は人類には程遠く、手足こそ2本ずつだが、頭は人類の10倍ほどで体とのバランスは取れている。顔はかつて地上に住んでいたサーベルタイガーの(きば)がない姿と言えば良いだろう。

 ただし、頭は360度回転し、悪いことに脳みそに相当する部分が人類の5倍以上もあり、その思考力は想像を絶するものがある。とは言え、頭が大きければ賢いと断言できるものでもない。夏目漱石の「坊ちゃん」だったか「猫」の中で頭の大きい生徒はバカが多いと書いてあった記憶がある。

 それはともかく、何万年も極寒(ごっかん)の地で育ったせいかマンモスのような体毛があり、全体像ははっきりしない。歩く姿勢はあえて言えば、1.5mほどの脚全体を上下に揺らしながら歩くので、見たものでないと説明するのが難しい。手足とも太くまるで、直径50cmの丸太がくっついているようだ。食い物は有機物なら何でも良く、動植物を問わず、悪いことに人間もエサになる。

 もともと、小さな球状銀河で細々と暮らしていたが、食料がなくなったために、他の銀河に乗り出したと思える。

 彼らの宇宙船、と言うか戦闘用の母艦は人類の想像を超えたもので、直径30km強の球に近い形だが、近よって見ると、一辺が1kmほどの六角形で黄金をもっと明るくした金属体が全面に張りついていて、どこに推進装置があるのかわからない。まあ、バーの天井で回転している、キラキラボールを想像してもらうと、当たらずと言えども遠からずだ。

 中はほとんどが有機物製造工場つまり彼らの食料及びオバサン猿人そのものの製造工場ではないかと予想される。以上の情報は友好関係にあるミード星人から得たものであり、人類で直接オバサン猿人を見たものは一人もいない。

 この宇宙船と最初に遭遇(そうぐう)したのが、我々の部隊の隣の(といっても数億光年は離れている)イタリア隊の調査船「カエサル6号」だったが、「巨大な物体に遭遇せり」と言う連絡があったきり、その後応答がなく、壊滅(かいめつ)したか、食べられてしまった可能性が高い。その時の映像が残っているが、それがミード星人の情報と一致したのだ。

 イタリア隊は60人とロボット7000体ほどで構成され、戦闘力はわが「ユカワ号」つまり、「田舎のバス」と大差ないほどの重装備なのだが、まったく歯が立たなかったらしい。今から8年ほど前のことだ。

 その後、同方面近くの調査船が半年ほどの間に4隻も消えたため、事は重大と認識されたのだ。イタリア隊と他の4隻、および偵察衛星からのデータを総合すると、どうも直径30kmを超える母艦7〜8隻からなる大艦隊がアンドロメダ銀河か天の川銀河を目指しているらしいのだ。ミード星人からの情報とあわせると戦闘隊形にまちがいない。そこで急遽(きゅうきょ)、大調査団が編成され、調査の結果、間違いなくアンドロメダ銀河を目指しているというものだった。しかも、1か月ほどで到着する可能性が大きいというものだった。

 そこで、アンドロメダ銀河方面の母船1隻、戦艦(ユープシロン)5(ヒデキ中尉はヤマトと呼んでいる。あの戦艦大和だ)を10隻と地球から母船11隻、戦艦約120隻、総母船数12、戦艦130、戦闘機約2500機の大連合艦隊が組まれた。対するオバサン猿人はわずか母艦(キラキラボール)が8隻のみ。しかし、その1隻から10100隻の我々の戦艦をはるかにしのぐ戦闘能力を持つ戦艦が続々と吐き出されるのは、恐怖以外のなにものでもない。

 

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 私が直接猿人と交戦したのは、40歳を少し過ぎたまだまだ若造の時で、戦艦直属の戦闘機Χ(キー)335(通称ブタ(まん)、なんとなく似ているからだ)のパイロットとしてである。戦闘機と言ってもゼロ戦のような小型ではなく、ジャンボ機を数倍大きくし、さらにゼロ戦の餌食(えじき)となった太っちょのグラマンをもっともっと太らせた姿を想像してもらうとよい。しかし、翼はおまけくらいのが付いているだけ。宇宙空間においては翼の必要はないのだ。本来なら巡洋艦の名称を与えてもいいくらいの大きさなのである。戦闘員がわずか5名なので戦闘機といわれているらしい。

 ほとんどが、武器、弾薬の積載に費やされており、主操縦室は意外に狭い。ほかに、副操縦室兼射撃室が4つもあり、メインの操縦室がやられたら、次の操縦室に移る仕組みで、少々叩かれても飛行には支障がない。装備は直径300mほどの岩石ならば、瞬時に破壊するプロトンレーザー砲20門を主砲として、超アナログ的な武器として、戦艦大和が積んでいた46cm装甲弾によく似た形をした、径約3m、長さ8mほどのミサイルというかロケットというか、とてつもなく大きな弾(ヤマト装甲弾)を数千発連続発射できる副砲が5門あり、現代風でないのでヤマト・バルカン砲のあだ名がついている。中味は1発に10メガトン(広島型の500)の核爆弾が入っている。なんだかすごいようだが広い広い宇宙では1発や2発だけメガトン級を食らってもさしたる効果はない。母艦や戦艦のシールドが強力なのだ。それでも、下手な鉄砲数打ちゃ当たるではないが、数当たればかなりの効果がある。主に、敵の防衛シールドを打ち破るのが目的である。その他、前後、左右、上下をさまざまな武器で武装していて、それらを200体を超えるロボットが操作している。と言っても、ここ数百年、戦争そのものがないので、実戦の経験者は全軍を通じてゼロである。

 対する、人類を見下すオバサン側の母艦は先ほど述べたが、母艦自体の武器そのものもものすごいが、母艦から続々と出てくる戦艦は、我々の考える戦艦とは全く違うもので、あえて言うならアメーバに近い。形が一定せず変幻自在なので説明に困る。直径800m前後のお好み焼きになったり、2km近い扁平なナンになったり、球形になったりでとらえどころがないのだ。

 しかしその物体から吐き出される無数の18面体の物体(大きさは径1mほど)が、こちらの戦艦や戦闘機に向かって来て、付着してシールドを破壊し、さらに内部にまで侵入して、自爆、戦闘機なら、23個で吹っ飛んでしまうという恐ろしいものだ。

 しかしこれは武器のほんの一つに過ぎず、このアメーバもいろいろなタイプがありそれぞれが違う武器を持つので対応は不可能に近い。よくこれだけのものを考え出したものだと感心するほどだが、感心している場合ではない。その間にやられてしまう。

 この情報も友好関係にあるミード星人から得たのであり、直接対決は一度も無い。私の乗っている戦闘機は通称名「ブタ(まん)」ではいかにもまずいので、20世紀の世界大戦で日本海軍の奇跡の駆逐艦「雪風」にちなんで「ゆきかぜ」と呼んでいる。戦闘機が駆逐艦の名を借りるのは変だが、形は船に近いのでこれでいいのだ。この「雪風」は第2次世界大戦で16回もの海戦に参戦しほとんど無傷で残った唯一の駆逐艦だ。さて、この我々の「ゆきかぜ」の目標は敵アメーバの殲滅(せんめつ)であり、最終的には、母艦の破壊だ。

 逆にこちらの母船が全滅ということになると、トリトンどころかアンドロメダ銀河全体がオバサン猿人のエサになってしまい、ここも数年で食いつくされ、次に我々の天の川銀河がエサとなり、人類はほぼ全滅という最悪の事態となるのだ。

 敵の母艦8隻は300kmほどの間隔でバラバラに離れており、特に編隊を組んでいる様子はないようだ。こちらは全軍を8軍に分け、各軍が敵母艦1隻と対戦する作戦であった。

 各軍は母船1、戦艦15、戦闘機300機よりなり、数の上ではオバサン軍を圧倒していたが、そこに、隙が生まれたのかもしれない。あまり、悲壮感のない出撃だったようだ。各軍が交戦中の情報が入り始めて間もなく、ヒデキ中尉は斥候役の飛行をしていたが、なんとも得体の知れない物体に出くわしたのだ。なるほど形は一定でなくアメーバにちかい。

 我々がぶち当たったアメーバは30km以上離れていたが、どういうわけか静止しており、(後から考えると、数百年間、かれらは行くところ敵なしの歴史だったので、我々をバカにしていたのかも知れない)来るなら来いと言っている様子だったので、「やってやろうじゃない!」という気になり、まずユカワ号にもある、ドーナッツ弾を1発お見舞いした。

 ドーンと当たり、アメーバはバラバラになり「なんだ、全然、弱いじゃないか。」と思った瞬間、アレアレと言う間にもとのアメーバに戻ったので、間髪を入れず、プロトンレーザーをあびせた。これはシールドでもあるのかアメーバに届かぬ先に、明るく光るだけで効果なしだ。そうこうしていると向こうからチカチカと何やら光ったかと思うと、第1とわれわれ第3操縦室の隣の第4操縦室から、不明の物体が被弾との連絡が入る。何の衝撃もなくこちらのシールドをパスしたのか考える間もなく、補助重力装置(話すと長くなるのでやめておくがエンジンの1種)20%が出力低下との通報。

 「こりゃ、まずい」と思い主砲の超タキロン・ヤマト弾の発射命令を下した。これは若干の効果があり、アメーバは粉々に吹き飛んだ。「ヤッター」・・・・・と思ったら、またまた集まりはじめたので、「こりゃ、ほんまにヤバイぞ。」と冷汗が出た。隣の2体のロボット操縦士兼射撃手も心配そうに私を見る。こうなればもうヤブレカブレである。

 幸いにも、先ほど敵母艦接近のほうが入っていたのと、スクリーンにはるか後方の母艦が写ってきたので、アメーバもろともやってまえのヤマトダマシイが憤然(ふんぜん)と湧きあがり、「

方位5003、距離1200キロ、集中度300、ヤマト砲全弾発射!」と命を下した瞬間、機体が分解するのではないかと思うほどの、ものすごい衝撃が10秒ほど続き、推定2万発のヤマト装甲弾が直径300mの範囲内で連なり、超高速で母艦に突進。結果を見る間もなく、「反転、全速で離脱!」の命を下す。

 戦線離脱は処刑ものだが、武器がない戦闘機が戦線をウロついても意味がないというのがヒデキ中尉の持論なのだ。途中、味方の戦艦は全く見えなかったので、一路、母船へ舞い戻ったが、あるべきところに母船がない。あちこち径10万キロほどを敵に見つからぬように母船を探したら、ようやくお釈迦様の糞掃衣(ふんぞうえ)のようなボロぞうきん状態の母船にたどり着いた。

機上から降りるとき、何万という乗組員から大歓迎を受けたのにはビックリ。すぐさま武器の積み込み再出撃の用意をと、わざわざ出迎えに出てくれていた船長に頼んだが、「まー、会議室に来たまえ。」と言われ、他の4人の副操縦士ともども「やれやれ、軍法会議か。」と互いにガッカリしながら会議室に入る。

 そこには、船長以下、副船長を含めても4人が居るだけだった。「まー、こちらへどうそ。」とアラビア系の顔をした船長のアリ中将はやけにやさしい。戦闘機乗りのヒデキ中尉にとっては中将といえば高嶺(たかね)の花の存在だ。相互に紹介があって本題に入る。

アリ船長「一体全体、どうやって帰還できたのか、話してくれたまえ。」

私「どうやってと言われても・・・・・・。それより、補給後にすぐ再出撃したいのですが。」

アリ船長「戦争はもう終わったよ。わが軍は壊滅(かいめつ)したよ。」

私「えー、どういうことですか。」と他の4人の部下も絶句。

アリ船長「副船長、戦況を説明してやってくれ。」

ということで副船長のシェーン少将からの説明は聞いてビックリ、見てビックリのものだった。母船12隻、戦艦130隻のうち、どうも生き残った母船はこのアリ中将の1隻のみらしい。らしいというのは、まだすべての報告が集計されていないのだ。というよりも、連絡がまったくないので、多分、破壊されたのではという心もとないものだった。どうりで、ところどころで残骸にぶちあたったがあれは味方の残骸だったのか。どうりで我々の戦闘機がほとんど無傷に近い状態(とそのときは思っていた)で生還したとき、数万の人が大歓声をあげたわけだ。

さらに、戦艦も戦闘能力を維持しているのが、なんと3隻、スクラップが16隻、あとの111隻はスクラップすらなく、消えてしまったらしい。各戦艦は平均120機の戦闘機を有しているので推定15000機が出撃して、戦艦にたどり着いた、あるいは現在飛行中の戦闘機はなんと62機で、そのうちの1機が我々なのだ。

シェーン少将が説明している時、船長に報告が入り、すぐ我々に伝えられた内容はまさに「うそだろー。」というものだった。早い話が、先ほどの生存している戦闘機61機は敵と全然遭遇しなかったというのだ。あるいは敵、接近の報に、いざ、戦おうと武者ぶるいしているうちに、スクリーンに写る敵が突如反転したとの報告もあった。

つまり、敵と戦って生還した戦闘機はわれわれの「ゆきかぜ」ただ1機だけというのだから、これははっきりいって全滅に近い。戦ったと言ってもアメーバのチカチカを1回浴びただけなのだがね。総司令部は母艦3隻、戦艦10、戦闘機100で主に各軍への支援用に温存していたのが、ほとんど一瞬のうちに消されたようだ。天の川銀河から母船36隻、戦艦約700隻の大艦隊が増援に向かったとの報告も入ってきた。母船36隻と言えば、天の川防衛軍の50%近い数だ。

とにかく、全戦場でほとんど同時に戦闘が始まり、わずか10分ほどで完敗だったということだ。そして、アンドロメダと天の川連合軍が壊滅したとき、なぜか敵の母船のキラキラ星が急遽反転、アンドロメダから消えたということなのだ。アメーバもすべて後を追い、広大な戦場(なにしろ地球を少し大きくした容積の範囲なのだ)は連合軍のまばらな残骸のみが残された。

 

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会議を中断したとき、補給に時間がかかるとのことなので、食事をしていると、呼び出しを受けた。

また会議だったが、今度は私だけの呼び出しだった。敵が大勝利の最中、突如退却とは摩訶(まか)不思議な現象だが、その時間が丁度、我々がアナログのヤマト弾を20000発も1か所(せいぜい径300m)に集中砲火をしたときと正確に一致したそうである。なにしろ、ヤマト弾2万発の一斉射撃は前例も実験もないし、第一、戦闘機の機体が持つかどうかの実験もしていないのだ。戦法としては考えられなかったことをしたわけだ。その時の会議で我々の退却時の記録が会議室で上映され、2万発のヤマト弾が、弾道に入った7〜8機のアメーバを蹴散(けち)らし。キラキラ星のシールドに突入。ほとんどがそこで消耗され、装甲弾も尽きたかと思われた時、1000発ほどがシールド突破、次々に金白色の金属板(多分金属版だろうとしか言えない。材料はわからないから)に集中したため、さしもの厚さ30mはあると推定される装甲板も突破、そして100発ほどが突入したらしい。ほんの10秒ほどの時間だ。何百万とばらまかれた偵察衛星からの記録だ。3次元画像で克明に記録されているので、かなりのことが分かる。もちろん、戦線をスタコラ離脱した「ゆきかぜ」の映像も克明に捉えられていたのは皮肉というか、なんというか・・・・・。

ヤマト装甲弾の威力が全軍に伝えられ、母船、戦艦、特に戦闘機に急遽(きゅうきょ)、装甲弾を積み込むことが決まったと後で聞いたが、装甲弾はアンドロメダには全くなく、天の川にも在庫がほとんどなく、こんな旧式な弾丸を作る製造所が多くあるわけではない。

もともと旧式の弾丸なので、今回の戦闘で積載していたのは戦闘機約15000のうち、100機にも満たず、しかも2万発も載せると戦闘機の行動力が落ち、ボテチンな動きとなるため誰も載せたがらない。2万発も積載しているのは我々の「ゆきかぜ」だけで、おかげで「ヘビー・ダンボー」なんてあだ名までいただいていた。なんでも、20世紀のディズニーと言う人が描いたアニメで、小さな象が空を飛ぶ、子供向けの物語があったようだ。で、他の戦闘機もせいぜい装甲弾を100発、いいとこ1000発も積んでいれば上の部なのだ。

そもそも、今回の危機がなければ、この数百年ほとんどいざこざがない平和な世の中だったのだからしかたのないことだ。いままで遭遇した人類に匹敵する高等動物は7つほどあるが、すべて、平和を旨としていたので、地球には軍隊はいらないのではないかという論もちらほら、出始めていたくらいなのだ。

そのむかし、インカ帝国という1600万人を(よう)する国家が南米に存在したが、スペインのコルテス(ひき)いるわずか300の騎兵に蹂躙(じゅうりん)され、国家は滅亡したという歴史的事実もあるので、強力な軍隊は平和な時代といえども常に保持、研究しなければならないというのが人類の総意である。当時、知識人のひとりのモンテーニュが「エセー」に、このスペイン人の残虐(ざんぎゃく)を批判しているが、財宝に目がくらんだ連中に何を言っても無駄というもの。同じ事が、人類全体の平和にも言えよう。と、ヒデキ中尉も考えている。

 

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 話を元に戻すと、母船には必ず戦艦3隻、戦闘機数十機が防衛についていて、最前線からは離れたところにいるはずだが、劣勢の報に、当然、戦場に向かったがそのまま音沙汰なし。母船は丸裸で小型戦闘機Ψ(プシー)210(ヒデキ中尉はゼロ戦と呼んでいる)数10機、ミニ戦闘機Ω(オーメガ)1055(通称マイカー)が1000余機舞っているだけだ。戦闘は終了したとはいえ、まだ数時間しか経過していないため、戦闘隊形を解くわけにはいかないだろう。

 武器の積み込みに3時間を要し、ただちに出撃。と行きたいところだが、第1と第4操縦室の被害状況が会議後に知らされ、母船では修理不能と知らされた。しかし、母船の防衛が小型戦闘機とミニカーのみでは母船の乗組員2万余の人たちは不安どころではなかっただろう。小型戦闘機は人型ロボットによる操縦で、ミニカーに至っては、人型ロボットすらなく、早い話が径3m、長さ6mのミサイルが飛んでいるのであって、しかも母船から離れたところで守備についているので、母船の乗組員にはほとんど見えない。

 とにかく、母船防衛に傷ついたとはいえ、我々1機でも飛行しておれば、いないよりましかもという気持ちで付近を警戒した。敵は退散したとはいえ、いつどうなるかは戦場の常だからね。

というわけで、今回の大戦は一応終了となったのだ。では、敵の7隻の母艦はどうなったかって?それがどの戦線でも敵側が圧倒的勝利をしていたのに、ヤマト弾を食らった母艦が何を報告したのか知る(よし)もないが、とにかく全部隊が突如退却したのだ。

 

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 先のオバサン猿人(人と言える姿ではなく、巨大なゴリラに顔が先ほど述べた牙のないサーベルタイガーを想像してもらうと、少しは伝わるかも)との大戦で唯一、勝利した我々の戦闘機の乗組員5人は全員特進し、中尉の私がなんと5階級特進して、准将、つまり将軍になった。他の乗組員も全員3階級特進して、全員が戦闘機の機長になれる資格を得たが副機長のゴメス准尉は大尉となり、機長になれるのに、あくまで私についていきたいということなので、仕方なく採用しているが、本当はひとりだちして機長になってもらいたいのだ。

 他の3人も同じ戦艦の所属戦闘機を希望し、認められた。将軍が1戦闘機乗りというのは世界に例がないので技術准将ということでムリヤリ認めてもらっている。そうしないと、私は退役するといったら、アンドロメダ防衛軍の参謀本部もしぶしぶ黙認というかたちになった。 

 前回、被弾して母船に戻ったときに被害状況を見る間もなく、船長に会議室に呼ばれたため、良くわからなかったが、後で被害を見ると、まったく奇妙な状況で、第1と第4操縦室に2mほどの正確な円形の穴があき、それが戦闘機を一直線に貫き、300mほどの向こう側までまるで空洞となっているのだ。通って見ると、複雑な配管や機械類はスッパリ切り取られているが、噴出物は一切なしだ。水道の配管も切られていたが切り口に留まっていて漏れる気配はない。空気口もやられていたので、時間がたてば、皆、窒息死するところだったのだ。母船の周りを警戒している時、なんだか息苦しかったのはそのせいだろう。警戒警報の設備もやられていたので、気付かなかったということだ。

 同行していたロボットがドリルを持っていたので、穴を開けようとドリルを当てたが、全く歯が立たずビクともしない。まるで透明なダイヤモンド製の薄いガラスが張り付いているようだった。これでは母船で修理できないはずだし、果たして地球に持って帰っても修理できるかどうか。こんな被害状況で、よくぞ2万発のヤマト装甲弾が発射できたものだし、よくぞ母船までたどり着けたもんだと思う。我々はよっぽど運が良かったのだとしか言えない。

 

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 アンドロメダ銀河内で人口が50万人を超える惑星はトリトンのみで、あとは5万人弱のゴンドー、その他は皆1万人弱である。地球に似た惑星が100近くあるがまだまだ探検中といったところだ。さらに、オバサン猿人のエサとなる森林を持つ惑星はせいぜい300ほどだから、10年もしないうちにオバサン星人に食いつくされるだろうと予想されている。

  大戦後の戦場調査で、奇妙な現象が、トルコ隊の調査船からもたらされた。なんどもいうようだがトルコ隊といっても乗組員のせいぜい2割ほどが、トルコ系と言うだけであって、他の乗組員の人種構成はごった煮で書くのも面倒という具合だ。しかもそのトルコ系というのも本人だけが自覚しているだけで、さまざまな人種のこれまたごった煮である

 その報告とは、戦場から0.3光年離れた径20kmほどの小惑星、というか大きな岩石に径6km弱、深さ6kmほどの円柱状の巨大な穴を見つけたというのだ。その穴の切り口から、例の敵母艦キラキラボールの閃光を浴びた証跡(しょうせき)ではないかというのである。

 この情報は人類にとって、非常に貴重なもので、とにかくキラキラボールの主砲の性能の一端(いったん)がわかったことになった。ミード人の解説によると、この真空砲は30秒に一回しか使用できない超強力真空砲だろうとのこと。交戦が10分間だとして、敵母艦1隻でこちらの母船20隻を消滅できるわけだ、なにがなんでもこの時間内に勝負をしないと、全滅の恐れが現実となる。

 軍事専門家でなくとも、すぐ気付くと思うが、オバサン猿人の軍を小惑星帯に誘い込んで、大岩石を楯に戦えば、ひょっとして勝てるのではということだ。アンドロメダ銀河にはそれこそ無数の小惑星帯というか岩石群があるので、径6km以上の岩石を多々作ればひょっとしたら、戦えるのではということだ。実践的なこの戦法はトップシークレットとなった。

さて、話は変わるが、先の大戦といってもわずか10分程度で終了したのだが、ほぼ8年後、人類が最も恐れていたことが現実となってきた。なんと、オバサン星人の母艦36隻の大軍団で戦艦(例のアメーバ状の物体)の推定数4万隻がアンドロメダに向かいつつあるというのだ。

 先の大戦ではわずか8隻の母艦に戦艦アメーバが1000隻くらいだったのがアメーバに関しては一挙に40倍の軍勢らしい。アメーバ側の主力武器は10を超えるが、そのうち最も恐ろしいのはわれわれの戦闘機「ゆきかぜ」が食らった例のチカチカと光ったら2か所の操縦席に穴のあいた真空砲だ。たまたま補助の重力装置がやられただけで戦闘力に支障がなかったが、真空砲を2発も食らってその程度だったのは、ほとんど奇跡的なことだったらしい。しかしそのことがわかったのはずっと後になってからだ。

 

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 そのほか、交戦直後の映像が70件ほど他の戦艦や戦闘機から母艦に送られていたが、主な敗因を述べてみると

(1)   いきなりアメーバに取りつかれて、応戦する間もなくクラッシュしたもの

(2)   球状になったアメーバが突進、激突してバラバラにされたもの

(3)   敵の母艦が強烈な金色の光を浴びせ、戦闘力がなくなったところで、アナログ爆弾で分解されたもの。

(4)   特に恐ろしいのは、母艦から発せられる暗黒紫色でしかも輝いていると言ったらいいのか、表現のしようがない閃光を浴びせ、瞬時に味方母艦が消える閃光弾。

 等数え上げれば30を超える種々雑多な方法で破壊されているのを見ると、戦う気が失せてしまうほどのものだ。

若干の解説を加えると(2)の攻撃でバラバラになったのはこちらの戦闘機ではなく戦艦である。戦艦は長さ約1.8km、幅約1.2km、厚さ0.8kmで相当大きい。(3)は友好の関係にあるミード星人の解説によると、(3)の攻撃を受けると有機体は消滅、つまり乗組員は消えて、ロボットだけの戦艦、戦闘機となり、戦闘能力はなくなってしまうのだそうである。しかし、これは自分たちの食料がなくなる事でもあるので、めったに使用しない。(4)は対処のしようがないほどの恐怖の武器と言えるが、先ほど述べたようにミ−ド人によるとこの閃光は30秒ほどに1回しか発射できないらしい。よほどエネルギーを食うのではないかとの話だ。

これで我々がアメーバに遭遇した時、来るなら来いと立ちはだかった敵の態度がよくわかった。たった1機の戦闘機ごときは敵のうちに入らなかったのだ。こちらのドーナッツ弾なんかはミスタードーナッツのおやつくらいに考えていたのだろう。いや、あの時バラバラになったのは、シールドすらはずしていたのかも。よほどバカにしていたのだろう。向こうがチカチカと真空砲を2発しか打たなかったのも、お手並み拝見というご挨拶だったのだ。まったく、後で考えると冷汗がでたのは、他の4人の部下も同じだったろう。これは運としか言いようがない。

 敵の母艦本体に遭遇した映像は我々の写ったもの以外はただ1件のみ。それは、偵察衛星からではなく、戦艦から直接送られてきた映像で、約5000km先の豆粒ほどにしか見えないキラキラボールへ主砲のイオ・ドーナッツ弾を30発ほど連続発射したところ、敵が一瞬輝いたので、仕留めたとスクリーンを見ていた人は思ったらしい。しかし、それはシールドにはね返された反射光だったのだ。それから、あらゆる方向にゆっくりと回転しながら突き進んで来るキラキラボールが一瞬止まった瞬間、人類が見たことのないような、輝く暗黒紫色の不気味な閃光が・・・・・。と、ここで映像が切れていた。戦闘機も周りに4050機いたはずだが、このとき同時にやられたのだろう。

 この場合は、戦艦だったが、もしこのように、母艦(長さ約6km、幅約5km、厚さ約4km)を一瞬に消し去る、真空砲(想像もつかないので仮の名だ)が存在するのなら、戦争にならないのでは。日本には昔からポックリ死ぬことができるように、わざわざお宮参りをしている人がいるそうだが、連合軍の母艦や戦艦の乗組員になれば、100%希望がかなえられるというものだ。

 このような戦況が映像でわかるにつれ、地球とトリトンの全軍の大本営ならぬ参謀本部会議は10分ほど静まり返り、物音ひとつしない不気味な雰囲気となった。

 

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 それから3年は何事もなく経過したが、その間人類は母艦、戦艦をはじめヤマト弾の製造、岩石群の構築はじめ、あらゆる兵器の製造に励んだが、ヒデキ准将は大いに疑問を持った。同じ過ちを人類をはるかに上回ると言われる脳を持つオバサン猿人が(おか)すとはとても思えなかったからである。絶対に対策を立ててくるし、へたをするとヤマト・バルカン砲は無力化する恐れがある。そこで、まず敵のシールドを破壊するためにヤマト弾の装甲を弱め、中味をメガトン級の核の代わりに、塩水、砂糖水はじめ劇薬、毒薬問わずあらゆる物質を2万発にそれぞれ装填し、径3kmほどの範囲でシールドに一瞬のうちに打ち込む戦法だ。そして、映像記録でその効果を分析するというもので、戦うわけではない。例えばコールタールがシールドを弱体化するということがわかれば、ミニ戦闘機プシー210(愛称はミニカー)にコールタールを満載し、敵母艦1隻当たり、10万機以上を突っ込ませれば、10%しか到着しなくても、ほぼシールドを弱体化できるのではというものだ。

 ミニカーは無人ではあるが、高性能なスパコンが入っているのである程度複雑な状況も自分で判断して敵に突進する。敵のシールドはこちらのシールドとはまるで違うのでデータもなくその効果は実戦で試す以外にない。シルバーボールからオバサン猿人に関するデータを得ようと必死に数10万の科学者が探しているが、現在のところ、もう3年にもなるのに、全く得られていない。ここで、准将の肩書が活かせる。つまり、戦闘機Χ(キー)335の機長は尉官クラスが大半だが、准将が機長ということで、その護衛を兼ねて小型戦闘機1000余機を指揮下に入れることが認められた。さらに、ミニ戦闘機オーメガ1055を2万余機、対アメーバ用としてあたえられた。

 あだ名はミニカーだが、20世紀のゼロ戦ほどの大きさで型もグラマンよりも太め気味で形だけの小さな翼がついている、あだ名のとおりのかわいい感じの兵器だ。

 

 さらにトルコ調査船からの情報をもとに、アンドロメダのトリトン、天の川の地球の周り3450万km〜3500万kmの間50万kmの空間に、どこから攻めてこられてもいいように、均一に、大岩石群を多々作ることが決定され、すぐ実行され始めた。幸い、トリトンの周りは、小惑星帯が多く、しかもアンドロメダは宇宙に多くの岩石が存在するのであまり手がかからないはずだ。地球には90%攻めては来ないだろうという調査のもとに、ボチボチ岩石群をつくりあげていた。と言うよりも、地球のまわりを岩石を取り囲むのは100年の歳月でもあればなんとかなるかもしれないが、10年そこそこではいかんともしがたいのだ。

 

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 アンドロメダ銀河に向かう母艦36隻の大船団が見出されたのは戦後8年ほどのこと。全宇宙に散開する移動偵察衛星からその情報が入った。アンドロメダよりさらに約50億光年かなたにあり、シルバーボールからでも約30億年も離れた、まだ名前もついてない小さな島宇宙から発進したらしく、ミード星人の情報では、この島宇宙はオバサン猿人の主要根拠地の一つらしい。

 彼らの進行速度からすると、3カ月ほどでアンドロメダに到着する可能性があると報告。言うまでもないことだが、昔は50億光年と言えば、電波で通信すれば、50億年かかったが、現在3766年では通信用ロボットのタキロン型P式倍力装置、ひらたくいえば、超スパコンの人口脳波でやりとりする。それでも50億光年の距離では数十日かかる。 

 さて、オバサン猿人だが食料になる銀河がいくらでもあるだろうに、なにをすき好んでアンドロメダや天の川に来るのかまったくわからない。とにかく、やって来るからにはおとなしくエサになる気は毛頭ないので戦うまでだ。

その作戦はというと、私の部下4人が乗る戦闘機は昔、昔の奇跡の駆逐艦「雪風」にちなんで「ゆきかぜ」と呼んでいるが、戦闘機が私の乗るのを含めて3機、その他に小型戦闘機プシー210が約2000機、ミニカー約36000機、それにダミーの戦艦3隻とで訓練を積んできた。ダミーの戦艦はあまりに旧式なので、あまり役に立たず、はっきりいえば矢面に立つ役目を担ってもらう。もちろん乗組員はすべてロボットだ。本番では、これらのメンバーで陽動作戦を決行するのだ。

戦場は、オバサン猿人の進行する場所にある、大小数千万の岩が存在する場所が選ばれた。名前すらない極小惑星群だが仮にエリアAとでも名付けておこう。 実際の戦場はトリトンにほど近いバイアス小惑星群となるだろうと予想されている。我々の陽動作戦も敵をそちらへ誘導するのも重要な任務の一つだ。

そのエリアAに小型戦闘機、ミニ戦闘機全機をワープ走行で送っておき、後から本隊が行く算段だ。よくSF小説などで、ワープ何とかと言って、あっという間に何100万光年先まで瞬間移動できることが書いてあるが、まんざら嘘ではないものの、あれには制限ガある。ワープ走行は直径600m以下でないと適用できないのだ。

戦艦はもちろん、戦闘機でもシールドをかけると軽く600mは超えるので無理なのだ。幸い、小型戦闘機ゼロ戦はB−29の翼をもいで、太っちょにしたほどの大きさなので、苦も無くワープできる。

ダミーの戦艦3隻に詰めるだけのさまざまな武器を積み込み特攻をやってもらう。無人にしているので、細かいことはできないが、とにかく、7000万km先のオバサン艦隊に対して徹底的に打ちまくり進行方向をこちらにむけさせるのが任務なのだ。

我々本隊がエリアAに到着して1時間もしないうちに、超広範囲に展開していたミニカー3万機が6機の敵偵察衛星を打ち落したが、攻撃を早めないと敵の衛星が集まりだすのは必至で、こちらの作戦がバレてしまう可能性が出てきた。そこで、3機の戦闘機用に径8キロを超える大岩石を適当に見つけ、早々と攻撃態勢に入った。ゼロ戦2000機は広範囲に展開して戦艦が退却したときに、向かってくるであろうアメーバの追跡を阻止する役だ。

7000万kmの距離で攻撃するのを、9000万kmに接近したとき、ダミーの戦艦3隻が敵母艦36隻のうち3隻に照準を合わせ、約3分間全砲門を開き、超タキロン・ヤマト弾、長距離Π(ぱい)レーザー20M等を集中攻撃。打ち終わると、一目散に反転退却したが、旋回中に、1分もしないうちに消されてしまった。例の真空砲を食らったに違いない。旧式戦艦は現役戦艦よりやや小さいが、それでも戦闘機の5倍程度の大きさはある。長さは1.5km弱だが幅が約1km、高さと言うか厚みが約800mだがいかにも戦艦というスタイルで強そうである。そんな大きな戦艦をあっという間に消すというのは恐怖を通り越している。

 その有様を3機の戦闘機は岩場の陰で見ていたが、生きた心地はなかった。オバサン軍団は痛くも痒くもなかったかのように、悠然(ゆうぜん)と直進を続けたが、母艦の1隻が離脱してこちらに向かってきた。大成功だ。これが全軍がむかってきたら、とてもじゃないが勝負にならない。攻撃態勢のためキラキラボールはゆっくり回転しているが、速度は光速以下どころか、宇宙では静止状態と言ってもよい秒速数百kmになっている。

 それにいつの間にか吐き出されたか恐怖のアメーバ戦闘機というか戦艦というか、要はアメーバを2000隻ほど従えている。アメーバは母艦を守るように、かなり前方に位置しこちらの目に届くほどの距離なったので、我々から80キロほど離れて岩陰にいたゼロ戦、ミニカーが一斉に出撃。アメーバがそちらに目をとられている一瞬を狙って、ヒデキ准将以下、3機の戦闘機がまだスクリーンで点にしか見えないキラキラボールに向かって、総数3万発、3万種のまだら弾を全弾砲撃。5秒そこそこで打ち終え、准将得意の戦線離脱、今回は3機の一斉反転だ。

 オバサン猿人側としたら小惑星というか巨大岩石の陰から、ひょいと半身をのぞかせて、攻撃してきたので、巨大な岩から打たれた印象だったに違いない。母艦からはこちらの戦闘機は見えないはずだし、たとえ真空砲を発射しても岩に巨大な穴が開くだけで、さしたる効果はない。

 小型戦闘機の攻撃を受けたアメーバはバラバラになったり、元に戻ったりしているが、ある大きさになるとミニカーが突っ込んで2メガトンの核爆発をするので、回復に手まどっていた。そうこうしているうちに、後続の700機ほどの仲間のアメーバが来て、ゼロ戦とミニカーはあえなく全滅。

 しかし小型戦闘機ゼロ戦、ミニ戦闘機ミニカーと交戦していたアメーバ軍のほとんどがこちらへ転身し追いかけてくる頃には「ゆきかぜ」ら3機は相当な距離を稼いでいた。なぜか母艦に動きはないようだ。奇妙な爆弾で面食らったか、本隊を離れたので、深追いを避けたのかどうかは知る由もない。

 そのうちアメーバの1隻が超望遠鏡の視界に入って来た。例のチカチカ真空砲をやっている。超高速で逃げているため何ともないようだが、後部格納庫5%損傷の報が入り、「こりゃ、ちとまずい!」と准将つぶやくと同時に、「ミニカー500発進!」の命を下す。ズズン!と軽い衝撃が走り、およそ500機のミニカーがアメーバめがけて突進。

 味方の戦闘機2機もほぼ同時にミニカーを発進したようだ。それまでほぼ直進で編隊を組んでいたが、数百隻とみられるアメーバがスクリーンで見え始めると、「3角編隊、距離20、煙幕開始!」の報を他の2機に知らせる。お互いの距離を50kmにして、正3角形に散らばって、透明な煙幕を張り、全体で径80km、長さ500kmの広大な大気層を作る作戦だ。「それじゃ、気化器作動」と言うと同時に、ゴメス副機長が他の2機に「気化器作動!」の命を下す。すぐさま、副機長を残して、機長以下3人の操縦士と8体の操縦補佐のロボットは席を立ち、急いで特注の無音瞬間気化器「ハックション」のある作業場に向かう。

 現場では100台を超える気化器には各々20体ほどのロボットがドンドン山積みしてある、あらゆるガラクタを径5mほどの穴に放り込んでいる。メインは200mほどのベルトコンベアにロボットががらくたをラインに載せ、さらにロボットがいろいろな廃棄物を突っ込むという算段だ。この作業場は室温が0度と低いので、たいていの人が「ハックション」をするのでこの名がついたそうだ。無音気化器というだけあって、コトコト、コトコトと小さな音と振動があるだけで、戦争でなければクラシック音楽のバックミュージックを流しても、十分鑑賞できるだろう。

 戦闘機3機で出撃した大きな理由の1つはこの煙幕を広範囲に張る事にあったといえる。3機がフォーメーションを描きながら、いわば、径80km、長さ500kmの容器の中に、たっぷりのガスをばらまき突進してくるアメーバをその容器にある大気圏に突入させて、消滅させる作戦だ。ガスはすぐには真空中で拡散消失しないように、超微粒子のガス固定剤も同時に含んでいるため、少なくとも、数時間は透明なガス状態を保持する。

 と、ここまではほぼ演習どおりにいっていたのだが、まだ半分もガス化がすんでない頃、コンスタブル大尉指揮下の戦闘機にトラブルが起こり、気化器がほとんど使えなくなったという連絡が入ると、作業を止めて、500kmほど先で、アメーバの迎撃態勢に入れと命令。コンスタブル機はスピードを急に上げ、視界から消える。

 大気の原料が大幅に減ってまずいなと思っていると、「機長、来て下さい!」との報にかけつけると、5つほど隣の気化器で作業していた金髪美人のチターナ嬢が手持無沙汰で待っている。投げいれるものがなくなったのだ。一部のロボットは自ら粉砕機の中に飛び込んでいる有様。すぐさまそれを止めさせ、「ベルトコンベアを投げ入れろ!」と大声で叫ぶ。

 こうなると作業ロボットの本領が発揮される。力だけが取り柄のような3m近いゴツイロボットがメリメリとベルトコンベアをぶっ壊すものだから、この時ばかりは作業場もすごい音響が鳴り響いた。他のラインも一斉に見習い始めたため、すごいシンフォニーとなり、クラシックが聴けるほどの作業場は一変して雷神達の酒盛りではないかという場となり、コンベアも尽きかけたかという段になると、ヒデキ機長何を思ったか、制服を脱ぎ始め、それを気化器に放り込み、あっという間にスッポンポンになったしまった。驚いたのは、チターナ准尉。淡い恋心を抱いていた機長があられもない姿になったのを見て、動転したのか、反射的に、ドミニクの名画「泉」のモデルと同じ姿になろうとするものだから、「いや、准尉お前はやめなさい。」と止めるのを聞かず、これまた、うまれたまんまの姿になってしまった。

 19世紀の小説「名探偵シャーロックホームズ」シリーズにアイリーン・アドラーなる女性が登場するが、ホームズは彼女を「彼女は男が命をかけるような、美しい美貌をもつ愛らしい女だった。」と表現しているが、まさにその表現がそのまま当てはまる光景で、一糸まとわぬ姿になる事でさらに美しさに磨きがかかったようだった。いつもは沈着冷静の准将もいささか戸惑ったが、アムステルダム大学教授、フノーシャー博士発明の性欲抑制剤を常用していたおかげでなんとか冷静になれたのは幸いだった。

 他のラインもベルトコンベアをぶち壊して、放り込むところまでは同じだったが、指揮をとっていた2人のパイロットはギリシャ彫刻の真似をするところまでは行かなかった。

 そんなこんなで、ギリシャ彫刻さながらの機長が操縦席に戻った時、ゴメス大尉が驚いたのはいうまでもない。

「 どうされました。」とゴメス大尉。

「どうもこうもない、ガス用のゴミがなくなっちゃってね。」と近くにあった薄手のジャンバーを腰に巻いて操縦席にすわる。

「大気層はうまくいきましたか。」

「うん、そのはずだが。ミニカーで生き残りのアメーバを処理しよう。全機発進命令を!」

「了解、ミニカー全機発進!アメーバを完全破壊せよ!」と言いながら、ボタンをトントントンと押す。同時に、

「ラインハルト機、マルコーニ機、ミニカー全機発進を!アメーバを完全破壊せよ!」と僚機に告げる。

がらくたプラスヒデキ&チターナ嬢の制服が加味された大気層が出来上がり、その場から30kmほど離れたところで小型戦闘機ミニカー2000機弱が旋回しながら待機、そのさらに50kmほど離れた場所で3機の戦闘機キー335が静止状態で、出てくるであろうアメーバを待ち受けた。

 准将の機「ゆきかぜ」はゴメス副機長に指揮をゆだね、准将は3機の総指揮をとる事になったが、その前にギリシャ彫刻のスタイルを制服スタイルにするため更衣室に入る。ものの2分で操縦室にかえると、操縦室のスクリーンにはポツリ、ポツリと赤みを帯びたおいしそうな形の巨大なアメーバがナンの形になったり、ブタ(まん)の形になった色んなスタイルで出てきていた。さしものアメーバも500kmの大気層でダメージを受け、すでに戦闘力は失せていた。

すかさず、2メガトンの核爆弾でもあるミニカーが体当たり。あえなく、木端微塵となり、大気層の仲間入りなる。それでも、たまに出てくる、薄いピンク色のアメーバは1機のミニカーでは破壊できないときは2機、3機とミニカーが体当たり。さしもの、こちらの戦艦をはるかに上回る戦闘力を持つアメーバも閻魔様のお世話になってしまう。

 2メガトンもの核爆弾が50km先で爆発すれば、相当な衝撃波を受けるはずだが、シールドのおかげでほとんど衝撃はない。最前線のミニカーでさえ、小なりと言え、シールドで保護されているので、近くで僚機が突っ込んで爆発しても、大きく飛ばされはするが、すぐ、元の飛行にもどれるほどだ。話は前後するが、ヒデキ准将が更衣室に行っている時、准将に変わってゴメス大尉が指揮を()っていたが、チターナ嬢どこで見つけたかボロ布をコーランでいうところの隠しどころをちゃんと隠して、つまり腰にまいて現れたものだから、アメーバ退治の戦況をスクリーンで見ていたゴメス君驚いて、しばし、戦況ではなくチターナ准尉を見つめていたが、ハッと我に帰り「准尉、そりゃ、ちとまずい。すぐ着かえてきなさい。」

「でも、戦況は?」

「大勝利だよ。安心して、着がえなさい。」

「そう、よかった。」と更衣室に行く。途中、作業室で指揮していた2人の操縦士スタール准尉とアベラール少尉に出くわしたが、作業場ですでに遠目でチターナ嬢の裸をチラリと見ていたので、驚きはしなかったが、2人はニヤニヤと顔を見あわせて、操縦室にもどった

 その後、イタリア系のスタール准尉は浮気の国の先祖の血が騒ぐのか、この日から、フノーシャー博士の薬効むなしく、10日間ほど眠れぬ日々を送ったとか。兵士間の恋愛は厳禁なのだ。

こうして、待つこと10分。大気層に突っ込んだアメーバは脱出を試みようとした時は、時すでに遅く、機体の操縦はできずに次々と大気層の仲間入りをして、後続のアメーバを焼き尽くす手助けをすることになった。500機ほどは気化してしまったが、何とか大気層を抜け出たら、ミニカーの体当たりと踏んだり蹴ったりだ。それでも脇に逃げ大気層を早めに脱出したアメーバは3機の戦闘機の総数15門の主砲のイオ・レーザー砲を受けバラバラになったところを、さらに副砲の広角砲を受けてバラバラの上にさらにバラバラにされ完全に大気の仲間入りをする羽目に。バラバラプラスバラバラになったアメーバは40機ほどで、そのころにはこちらのイオン・レーダーに何も映らなくなっていた。

遠く、2000万km先でこの光景を見ていたであろう敵母艦の指令室は次々に消えていく味方の戦艦の阿鼻叫喚を聞いて(我々の常識で考えると、多分、アメーバから発せられているはずだ)深追いを避けたのかびくとも動かず、1時間ほどその場にいたが、本隊に合流するためか、やがてレーダーの視界から消えた。

 この時、敵母艦が向かってきたらとても合戦にはならなかっただろう。ほとんど2000隻のアメーバとの戦いで戦力は使い切り、そもそも、この陽動作戦は敵母艦と戦うことは念頭にはなかったのだからね。逃げの一手の作戦だったのだから。

 

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こんな具合で陽動作戦は大成功に終わった。ヒデキ准将の指揮が良かったというよりも、運が運を呼んだとしか言えないまさに奇跡の連続だったと言うよう。こちらの損害は、小型戦闘機約1200機、ミニ戦闘機約32000余機だが、人的損害はゼロだ。ひるがえって、オバサン側はこちらの戦艦を上回る戦闘能力を持つアメーバ推定2000隻を殲滅(せんめつ)されたのだから、大敗である。

しかし、目的が成功したかどうかは敵母艦にぶちこんだ3万種の判別の結果しだいだ。

 決死隊ともいえるヒデキ准将の戦況の記録が2カ月後に迫った大決戦の戦略に重大な影響を及ぼすことになった。陽動作戦の最大の戦果は、キラキラボールのシールドはアルコール42%の芋焼酎と96%のウォッカに弱いことが後日の分析でわかったことである。この2か所がブチ当たったところだけが、シールドが白濁して目だったため、シールドが複雑な回転をしていることまでわかった。シールドと白金色の本体とは別々の回転をしているのだ。シールドは固定されているのではなく、また、本体と同一に回転しているのではないことも判明した。

 ふしぎなことに100%のエタノールやメタノールには何の効果もなかったが、あの頑強そのものの敵母艦が焼酎やウォッカのようなアルコールに弱いという、うそみたいな事実もわかったことは大きい収穫だった。もうひとつの成果はあのうるさいアメーバが大気に弱いことも実戦で確かめられたことだ。交戦中はほぼ秒速100200kmの速度で移動するので、付近に広大な大気圏ができれば、それだけアメーバは行動がにぶくなるはずだ。

 24世紀に発明された新金属というか柔らかく、手でちぎれる新合金ネトロンとウラル地方の石炭から取れたコールタールを混ぜた粘着弾が、バラバラになったアメーバの再生を大きく阻止できることがわかったのも、3万種のまだら弾の一部が母船の防衛をしていたアメーバにぶち当たり、再生に手間取る様子が克明に記録されていたからだ。この3万種もでたらめに採用したのではなく、各分野の専門家が合議のうえ選出したものだが、はじめは2万種でとどめるつもりが、専門家の間で紛糾(ふんきゅう)したため3万余種も打ち込むことになった。

 そんなこんなでまだまだ陽動作戦の映像記録から判明した有益な情報は多々あるが、このあたりで止めておこう。

 そこで、地球上の関連の全工場、研究所が24時間体制でネトロン、ウラル産コールタールを製造、それに42%の芋焼酎、96%のウォッカの分析にかかり、その微量分析の結果から数100種の成分の製造に着手したのである。もちろん、芋焼酎とウォッカの寸分たがわぬ合成酒を造るためだ。20世紀の化学では芋焼酎の微量分析はそれだけでも数か月を要するが、38世紀では瞬時に分析でき、さらに微量成分も作れるので後は混ぜるだけだ。

 

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しかし、珍奇ともいえるこの作戦には疑問を持つ者も多く、正攻法で戦いたいとする将軍は9割を超えた。連合国、主要国の元帥16名が集められ、時の天皇陛下にも大元帥として約1800年ぶりの出席要請がなされたが、軍事には疎いとの仰せがあり、地球防衛軍の(そうま)大将が陛下の代理として元帥格で出席することになった。なにしろ、38世紀の世で、世襲の王、皇帝は日本の天皇家のみとなり、全世界の精神的シンボルとして尊敬を一身に集められていたのである。

元帥会議ではヒデキ少将(前の陽動作戦の功績で昇進、もちろん本人の希望で技術少将だ)の案をどの程度採用するかの一点に絞られ、アンドロメダ銀河にあるバイアス小惑星帯に敵を誘い込んで戦うという案は賛成したものの、武器に関しては原則、長距離用Π(ピー)レーザー20MB、中距離用プロトン・レーザー、短距離用パルス・レーザーを主装備とし、予備として各戦艦に1万発、各戦闘機に1000発の装甲ヤマト弾を積み込むことが決まったが、その他の武器は戦艦、戦闘機等に何を積載するかは、36の部隊の司令官の判断にゆだねられた。

少将の作戦では戦艦には少なくとも20万発、戦闘機には2万発積んで欲しかったが、何しろ生産が間に合わない。しかし、幸いなことに戦艦はともかく、戦闘機は主砲をすべてヤマト弾用に改造したのも多かったので副砲を含めると25門が装甲弾を発射することが可能である。機体も当然、全弾発射に耐えられるように改造されている。

会議では作戦本部をトリトンに起き、全軍をトリトン付近に集結させておいて、バイアス小惑星帯あるいはオバサン軍の動きに合わせて戦場に移動ということに決定。全軍とは言うまでもなくアンドロメダと天の川の連合軍のことで、実際は地球とトリトンの連合軍といってもいい。他の惑星はまだまだ開発途上なのでとても軍事産業はないにひとしいからである。母艦310隻、戦艦約3600隻、戦闘機約4万機、小型戦闘機、ミニ戦闘機にいたっては正確な数はつかめない(なにしろドンドン製造中なのだ)が小型戦闘機約450万機、ミニ戦闘機はゼロ戦の約6倍の2600万機のまさに人類史上最大の軍勢を呈した。総人員は約810万人、人型ロボット約8000万体と言う構成だ。ほとんどが、この8年間に大増産されたものだ。兵士も3割はこの8年間に養成された新兵だ。

 このうち母艦1隻、戦艦12隻、戦闘機約100機、小型戦闘機ゼロ戦約20万機、が少将の指揮下にはいる。ミニカーはまだ何機が編隊に入るかは不明だ。小型戦闘機以外は全軍の1%未満にも満たないが、ヒデキ少将はマーマー満足している。時代が違うとはいえ、少将程度のランクで戦艦12隻は破格も破格、天地がひっくり返るほどの陣容だろう。しかも配下に入る軍人はほとんどが少将の采配に心酔している人がほとんどなので、少将としても動きやすいはずだ。

 

 対する、オバサン軍は先にも言ったように母艦36隻と戦艦(アメーバ)、推定約8万隻と、戦艦数で圧倒していて、戦いにならないようであるが、わずか3隻の旧式戦艦と戦闘機3機のヒデキ准将旗下の陽動作戦部隊が約2000隻の敵の戦艦を殲滅(せんめつ)したことで、連合軍の士気は大いに盛り上がってきた。ただこれはあくまで奇襲作戦であって、桶狭間の合戦でわずか3000の信長勢が4万の今川勢を破ったようなもので、歴史上ではほとんどありえないことなのだ。特に母艦の戦闘力が段違いなので、数字だけを気にしてもあまり意味がない。それにこちらの母艦の戦闘力は戦艦の数倍はあるが、あくまで後方支援(負傷兵の収容、兵器の供給、戦艦等の応急修理等)が主体で、敵母艦とは比較にならない。

 なにしろこちらの母艦の大きさがせいぜい長さ6km、幅5km、厚さ4kmほどのずんぐり型に対し、オバサンの母艦は直径約30kmの球形なので赤ちゃんと横綱ほどの違いがある。ちなみにオバサン猿人(例の身長34mのごつい奴)は母艦1隻あたり推定45万匹はいると思われるので、1匹当たり少なくとも20人分の食料はいるだろうから、毎日、約10万人分の食料がいることになる。

 そうなると母艦のなかは武器もさることながら、ミード星人の情報では、独自の食料栽培が行われているらしいので、もしそれが本当なら、母艦の中味は大半が農場なのではということになり、話が牧歌的になる。

 最近、友好関係になったミード星人が助太刀を申し込んでくれたが、軍事的に見るべきものはなく、提供してくれた戦艦約3000隻、戦闘機約60万機も何しろ身長80cmに合わせてあるので、戦艦はすべて、負傷兵の収容、治療にまわってもらい戦闘機はその戦艦の防衛に専念してもらうこととなった。さいわい医学は人類のレベルに近く、身長が小さく、手足も小さい分、より繊細な治療が可能で、実際に多くの負傷兵が命を救われた。しかし、戦艦の出入口こそ高さが3mはあるが応急の病室出入口の高さが何しろ1.5mほどしかないので、入る時こそ、担架なので入れるが、元気になって出るときは、みんな腰をかがめて、じいさんになって出てくる羽目にならざるを得ないのは格好が悪かった。

 

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 あと数日で大決戦と言う時、とんでもないこと起こったのである。わずか20分ほどのあいだに敵母艦36隻が、なんとわずか9隻に減り、その代わり直径が50kmを超えるのではないかと思える、それこそ小惑星といってもいいぐらいの巨大母艦に変身し、みるだに恐ろしい超巨大ギラギラボールになったのである。色彩も金白色から気味の悪いことこの上ない人類が出合ったことのない、死の世界を思わせる濃い暗紫色でしかも、内側が暗い赤色で光っている何と形容してよいかわからない、要は人類を恐怖におとしいれる光とでも言えばいいのか。

 偵察衛星の情報では、突如、母艦4隻が見る間に合体している光景が良く捉えられているが、途中ですべての映像が切れてしまった。ギラギラボール周辺物体はすべて破壊されたらしい。その後の、映像ではバラバラだった母艦が各辺約1500kmほどの立方体に編隊を組み、真ん中に旗艦らしい母艦を中心として進撃するさまはなんと表現すればよいか。

 参考までに図示すると図Aは母艦の配置、図Bは実際に見た目の感じです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


図A

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


図B

 

 

要はサイコロの中心に核があり、その各角に母艦が位置する編成だ。正面から見ると恐怖の六角形が迫ってくる感じだ。この編成がどのような意味を持つのかは知る由もない。

 これではいままでの作戦はすべて無駄になりかねないので、作戦本部に緊張が走った。早い話が、超巨大ボールのシールドがどの程度のものか見当もつかないし、さらに正6面体の編成軍の外側シールドの強度もさっぱり未知のものなのだ。

 前哨戦(ぜんしょうせん)として、急遽(きゅうきょ)、戦艦12隻、戦闘機約100機が特攻的な役割を(にな)い出撃。径30kmほどのいびつな巨大岩石やその他の大岩石の陰に隠れて、まだ、レーダーでしか見えない3000万kmかなたの先頭を走る母艦に向けて、各種レーザー砲を一斉砲撃。また、他の大小の岩石の陰から戦闘機も先頭の母艦に合わせて主砲の長距離Π(ピー)レーザー60門で参加。総計300門の各種レーザー砲を径300mの範囲に集中させた。

 しかしアメーバの立方体形の母艦9隻は何事もないごとく直進。逆に他の8隻から真空砲を受けると、初めの30秒ほどは巨大岩石のおかげで何とか持ちこたえていたが、すぐに穴だらけになり次いで粉々になった。もちろん全艦隊、戦闘機も一か所攻撃を守りながら、応戦したが岩石の楯がなくなって、次々に穴だらけになり戦闘不能になっていく。こちらの砲門がすべて沈黙するのに3分とかからなかった。比較的遠距離なので敵はまだ戦艦のアメーバを配置していなかったが、オバサン軍は味方の戦艦なしでも十分戦えることを証明した。

こちらの戦艦はバラバラにはならなかったものの、こちらの砲撃が完全に止むと、穴だらけの戦艦12隻はやがて12本の紫の透明な光を浴びて、一瞬のうちに消えてしまった。

 正攻法を強力に主張してきて、今回の総指揮を()ったマルテランジュ大将以下約2900名の将兵は露と消えたのだ。これらはすべて偵察衛星の映像や戦艦と戦闘機からの報告によるものだが、すべてが途中でプツンと消えているのは閃光をあびたからだろう。全軍激突わずか3日前のことだ。正攻法はまったく意味をなさないことが、はっきりわかったときの作戦参謀本部の並みいる将校は人類の滅亡を実感したにちがいない。正攻法で戦うと主張していた将軍たちもこの事実に身の毛がよだち、ヒデキ少将の実戦で実績のある奇策に人類の命運がかかることになった。

 話が3カ月前に戻るが、アメーバ軍がアンドロメダに進軍しているらしいとの情報が入ってすぐに、輸送船をはじめとしてあらゆる種類の宇宙で移動できる交通手段の船舶はバイアス小惑星帯をはじめとして、トリトンを中心として直径3000万kmの球形の表面のどこから侵入しても、30万kmの距離から攻撃できるように、地球も同様に8年前から岩石群の配置をすすめていたが、それをさらに強化すべく、約600か所に人工の岩石帯をつくることに全力を費やしたのだ。

 作業そのものは簡単で、例えば1000万kmの距離のところに糸川タイプの600mほどの岩石があれば、戦闘機がチョイと押せば後は慣性で時速100万kmはすぐ出せるので、10時間後に目的の岩石帯のところで受け止めればいいのだ。幸いトリトンの周囲は小惑星や岩石が多いので材料にはことかかない。なにしろ、戦艦や戦闘機も参加して、数千万機の作業となった。戦闘ではなく簡単な作業なので人員は100分の1以下として、ロボットまかせだ。その他、アンドロメダ全域から星改造用の超大型ロボット数万体も参加して作業は順調に進んだ。そうは言え、やはりバイアス小惑星帯になんとしても引き込みたい。

 

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 そうして、大決戦の時がきた。全軍を36軍に分けていたのを9個の軍に統合し、少将の部下も9隊に分かれ、それぞれの軍団の指揮下に入る。戦艦、戦闘機で主だった部下はラインハルト大尉以下すべて全9軍に均等に配属され、1番槍の役をやることになった。各1番槍部隊は戦艦1隻、戦闘機10機、小型戦闘機2万機、ミニ戦闘機20万機がそれぞれあてられ、装備もアルコール充填弾で武装?されている。とにかくこれでシールドに傷をつけ、あとは本隊が総力をあげ、傷ついたシールドめがけて1点集中の攻撃をかける戦法だ。

 と、する予定だったが、3日前の立方体隊形のシールドに対しては正攻法では全く歯が立たないのは特攻隊の犠牲でわかっていたが、その他のことはこの隊形がどのような意味を持つのかほとんどわからないので、大きな変更を余儀なくされた。

 最初はヒデキ少将が所属する第9軍はサイコロの真ん中に位置する旗艦と思しき、母艦を攻撃する名誉を得ていたが、サイコロのシールドは前面よりも一番後ろのほうが弱いだろうとの、少将の直感で第7軍の1番槍の隊と交代し、なんとしてでも外側シールドの破壊を最優先した。

連合軍の総大将である相馬大将は1番槍の隊長全員を集め、「この戦いは、まさに人類の存亡がかかっており、1番槍の諸君は特段に重要な使命を帯びていることを自覚し、なにがなんでも、シールドを打ち破ることを強く、切望する。」との、激励があり、その後、とくにヒデキ少将が呼ばれた。

「この大戦は君の戦いにかかっている。外側シールドが破れなければ勝ち目はない。いるだけの軍を出すのでなんとしても打ち破ってもらいたい。」と総大将。

「外側のシールドはあまりにも広範囲なので意外と弱いと思います。ですが、念には念を入れ、いまの3倍の戦力を配備していただければ、申し分ないでしょう。」

「分かった。装備はどうする。」

「余っているヤマト装甲弾を可能な限りまわしてください。」

との話し合いで、予備軍として、母船の防衛の役を(にな)っていた戦艦2隻、戦闘機40機、ゼロ戦4万機、ミニカー40万機をもらい、開戦10秒前の時間に敵の最後部の第7番母艦のさらに最後部めがけて、アルコール弾を浴びせ、外側のシールド破壊を(にな)った。もともとシールドは相当のエネルギーを食うところに持ってきて、各辺1500kmの立法体の超巨大シールドともなると、少将の言う通り、そんなに強力なシールドではないとみたほうがいい。

 しかし、失敗は許されないので、300%の成功を目ざして、少将は予備軍をもらい、3倍の軍勢を指揮下に入れ、外側後部シールドの破壊と同時に敵母艦第7軍の内側シールドの破壊を担当した。ここに至って、決死の覚悟を示すために、ナラダッタ大将の許可を得て、ヒデキ少将所属の戦艦3隻にZ旗をかかげることにした。 

Z旗とは「皇国の興廃この一戦にあり、各員一層奮励努力せよ。」の意味があるのだが、ナラダッタ大将はネルソン提督の名文句「英国は各員がその義務を(まっと)うすることを期待する。」を頭に浮かべOKを出したのだろうが、ヒデキ少将の思いは少々違っていたようだ。さらに、大将に内緒で、自分の乗る戦艦にはZ旗の隣りになんと、日章旗までひるがえしたのだ。双方とも、10m×12mほどのでかい金属の旗だが、戦艦の大きさから見るとないに等しい存在ではある。

人類にとって、幸いだったのは、オバサン軍がバイアス小惑星帯に突っ込んでくれたことだ。中心部からかなりはずれたとはいえ、それでもその他の地を戦場とするよりもはるかに防御となる岩石が多いのだ。その大小様々の岩石を蹴散(けち)らしながら、1辺約1500kmの巨大立方体隊形の内側に4〜5万機の戦艦アメーバをしたがえ、トリトンに向かう姿は、鉄壁の守りを誇示し、人類に戦う意欲を失わせるに十分のものだった。

 速度はせいぜい秒速200kmのノロノロしたものだ。先頭の敵第1母艦がバイアス小惑星群に入り、旗艦が通り、続いて最後部の第7母艦が入って60秒を超えたころ、少将の第1声が冷たく1番槍の部隊に響いた。

1番槍部隊、アルコール弾、第7母艦28地点に向け、全弾発射!」の声が終わるか終らないうちに、1番槍の戦艦、戦闘機の副砲が敵第7母艦の後部中心部に向かって開いた。すさまじい轟音が3秒ほど響く。アルコール弾はヤマト弾の中味をアルコールに入れ替えたもので装甲も薄く軽量化され、すぐ爆発するように改良している。間髪をいれず、「1番槍部隊、ヤマト弾、第7母艦28地点に向け、全弾発射!」とこれまた冷たく響く。戦艦、戦闘機の全主砲から、今度は重量もたっぷりのアナログの爆弾だったので、さらにものすごい轟音でからだが震える。総ての砲塔から60万発のヤマト装甲弾がアルコールで弱体化した外側シールドで20万発ほどが消費されるが5秒ほどで突破、その勢いで、40万発のヤマト弾が第7母艦のシールドへほとんど同時に到達。ここで推定30万発弱のヤマト弾300万メガトンの核爆弾がさく裂、さしもの強力シールドもあえなく崩壊、あっという間に,息つく暇もなく、推定10万発のヤマト装甲弾100万メガトンが母艦の金属板に激突、さく裂したものだから、亀裂が生じ、敵の第7母艦は応戦する暇もなく回転を停止、すかさずゴンザレス大将指揮下の第7軍の母艦、戦艦、戦闘機の全砲塔から放たれたヤマト弾、推定200万発、そのうち数万発が艦内に突入、さしもの直径50kmの巨大ギラギラボール母艦は大爆発、不気味な暗紫色の美しい花火となって、立法体隊形の一角はわずか10秒足らずで、崩れた。残存のアメーバとの戦闘があったといえ、第7軍の出番はあまりなかったといえる。

 約束の10秒が経過し、味方の各軍団の1番槍部隊は、各々、敵母艦めがけてアルコール弾を集中砲撃、ヒデキ少将の部隊と第7軍の活躍で外側シールドは弱体化していたため、各部隊はアルコール弾で弱体化するまでもなかったが、その時はわかるはずがなく、作戦通り、アルコール弾を発射、続いてヤマト装甲弾を発射とまでは、一番槍の各部隊、同じ手順だったが、各部隊でそのタイミングが微妙に異なったため、その後の各部隊の戦況に大変な差が出たのである。つまり、ギラギラボールはゆっくり回転しているのでその回転にあわせて一点集中しなければいけないので、かなり難しい攻撃なのだ。

 

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 ナラダッタ大将の第7軍はヒデキ少将の1番槍の大成功でほとんど無傷で敵の第7母艦を瞬時に破壊したが、ヒデキ少将と急遽(きゅうきょ)交代したラインハルト大尉はヒデキ少将の作戦を支持する数少ない将軍、第9軍司令官ゴンザレス大将の1番槍部隊のカッパ少将の補佐の役だった。その彼は急遽(きゅうきょ)、最強と(おぼ)しき敵第9母艦、つまりサイコロの真ん中に鎮座(ちんざ)する敵の攻撃を受け持った。位置からして、敵の総司令部がおかれていると思われる母艦だ。

 当然、真ん中の敵母艦はヒデキ少将の担当と思っていたのが、自分に降りかかり、相当な圧力となったが、ヒデキ少将のアドバイス通り、外側シールドに30%の戦力をそそぎ、ダメな時はあとの70%をとにかく全弾叩き込むように言われていた。ヒデキ少将の思惑(おもわく)通り、外側シールドに30%の戦力、つまり、戦艦1隻、戦闘機20機が若干の誤差はあるが、全砲門開いて約20万発のアルコール弾をあびせ間髪をいれずアルコールをあびて弱体化している外側シールドめがけて、20万発のヤマト装甲弾を叩き込む。かくて、あえなく外部部シールドは崩壊・・・・と、ここまでは順調だったが、内側シールドを破壊するタイミングがややずれて、中途半端な破壊となった。ギラギラボールは回転しながら応戦してくるし、無数のアメーバがこちらへ直進してくる。予想していたとはいえ、冷や汗ものの場面だ。 

 次いで、第9軍の全部隊、戦艦400隻弱、戦闘機約4000機の全主砲がユックリまわる

若干傷ついたシールドめがけて1200万発を目には見えない敵をめがけて連続発射。11機のヤマト弾は数は少ないが、合わせれば多い1200万発だ。その成果を見ることもなく、引き続き、数秒後に各自、副砲を全門発射。おもに中距離用プロトン・レーザーだがそのほか10種類に近いまるでレーザーのオンパレードで発射。レーザーは無音なので戦場はさきほどのアナロク弾の発射とは段違いの静けさ。

すべての発射が終わったのが、せいぜい3分ほどか。みんな時間間隔はない。その間、敵母艦やアメーバから真空砲では岩が邪魔して効果が薄いと感じたか、オバサン軍のアナログ弾とも言うべき、爆雷のようなものを放出したらしく、金属を感知したら数メガトンの核爆弾に匹敵する破壊力を持つ爆弾が味方の戦艦、戦闘機を破壊し始めた。予期せざる爆発が各所で起きるのは、ほとんどの爆弾は途中で40万機のゼロ戦や250万機のミニカーが破壊しているのだろう。

1200万発の効果があって、ギラギラボールは回転を停止したが、盛んに爆雷ようのものを放出しているので、このままだと、こちらも全滅しかねない。総司令部に援軍要請をすると同時にゼロ戦とミニカーのヤマト弾搭載機に特攻を指示。残存の約30%のゼロ戦約2万機、ミニカー約65万機がアメーバとの交戦を止め、中心の敵9軍母艦に大挙一点集中突入、スクリーンでこの突入の様を祈るように見ていた司令部のゴンザレス大将以下将兵たちは、つぎつぎと真空砲その他で消え去る味方の特攻機に心底、神の到来を祈ったのだ。

それでも数%が突入を果たしたのか50kmの球体が徐々に割れ始め、数秒で一挙に大爆発、様々な大きさの破片がそれこそ無数に飛び散った。大きな破片は5kmを超えた。

と、ここまでは大本営発表のように調子が良かった。また、アメーバは遥か前方で待機している小型戦闘機プシー210、約40万機、ミニ戦闘機オーメガ1055,250万機が応戦するので、戦艦や戦闘機までやってくるのはせいぜい数%、つまり数100機ほどだ。それもほとんどが例のタール弾(ウラル産の石炭から作られたものと新合金ネトロンとの混合物)を浴びているので、ドーナッツ弾を2,3発あびせると簡単に分解。もはや、再生しなくて宇宙のチリとなる

しかし、このような戦場は敵艦隊の中心の第9母艦と戦った第9軍および最後尾の敵第7母艦と会戦した第7軍のみで、あとは、チターナ中尉担当(1番槍部隊の副官)の第3軍、

コーサンビー大尉担当の第6軍が善戦しているだけで、第2軍、第4軍、第5軍は苦戦、

8軍は大苦戦で、マルコーニー大尉担当の第1軍は壊滅状態に陥っている報が会戦10分ほどで、全軍に伝えられた。

 ものの3分ほどで、敵第7母艦を粉砕した、ナラダッタ大将旗下の第7軍は最初の作戦通り、第9軍の支援に向かうべく、一部は若干の移動をしたが、まだ大きな移動は伴わないまま、砲塔の角度を変えている時、総司令部から第18軍より支援要請あり、との報に

9軍の支援を中止し、一番遠方である第1軍支援に向かう。破壊された敵第7母艦の多くの残骸は爆発で同僚の第19母艦を追いかける形になったので、その陰に隠れながら、敵第1母艦を追跡。特に味方第7軍のゼロ戦30万機強、ミニカー200万機弱が敵第1母艦の後方に殺到。これには、完勝を確信していた敵母艦もびっくり仰天下したに違いない。

 第7軍が支援にかけつけたときは第1軍の司令官ジャポチンスキー大将も陽気なマルコーニー大尉もすでに戦死。指揮は副司令官フサイン中将に移っていたが、すでに戦力は母船5隻と若干のゼロ戦、ミニカーのみという状態。

 かけつけた第7軍のゼロ戦、ミニカーは旋回するアメーバを次々と捕食、破壊。前方にばかり集中していた敵母艦は武器の大半を後方の防御にまわしたときには、すでに自慢の暗紫色のきらめく金属パネルは30万機を超えるゼロ戦、200万機を超えるミニカーがマルコーニたちが何とか傷つけたシールド目がけて突進に次ぐ突進してきていた。ために、悠々と回転していたギラギラボールもついにゆっくりと停止した。

 ここで、第1軍の残存の母船5隻が全身を現し、ちょうど破れたシールドが母艦の方に向いたのを幸いに、全艦主砲250門から、残りのヤマト装甲弾20万発弱を弔い合戦の恨みを込めて発射、次いで同じ箇所めがけて、主砲250門から長距離レーザーを、副砲250門から中距離プロトン・レーザーを、同じく副砲500門から短距離レーザーを、要は全武力をやぶれシールドへ集中したものだから、50kmを誇るギラギラボールをレーザーが突き抜け、反撃もまったくしなくなった。

 こうなると、自爆の恐れが出てくるので、急遽(きゅうきょ)、ゼロ戦とミニカーは敵第1母艦から、離れ始めたが、時すでに遅く、とてつもない閃光とともに自爆、宇宙のもくずとなる。そのため支援にかけつけた第7軍はゼロ戦とミニカーの大半を失ってしまった。

 母船艦、戦艦、戦闘機は数千km〜数万kmの位置から攻撃しているものが大半なので、被害は少なかったが、それでも、戦闘機は100機近くがあおりを食って、破壊または戦闘不能におちいった。ほとんど無傷の第7軍としては大きな人的被害だったといえる。

 そのころにはゴンザレス大将旗下(きか)の第9軍も旗艦とおぼしき敵第9母艦を制圧していたので、敵の立法体隊形は先頭、中心部、後方ががらん胴になり、風通しの良い陣形となったがそのまま、敵母艦は陣形を変えずトリトンを目ざして行く。その間、大苦戦が伝えられていた、第8軍にはラインハルトの第9軍が支援に向かい、余裕のナラダッタ、ヒデキのコンビの第7軍は総司令部(母船3隻)の指示で苦戦の第4軍の支援に向かう。

 その前に、総司令部は苦戦の第245軍の援軍要請を受け、総司令部の防衛および支援用の戦艦2隻、戦闘機200機、ゼロ戦10万機、ミニカー30万機の援軍をそれぞれの軍に向け発進。善戦中のチターナの第3軍、コーサンビーの第6軍にもダメ押しのゼロ戦5万機、ミニカー10万機を送ったため、総司令部の母艦防衛は戦艦4隻、戦闘機100機弱、ゼロ戦5万機弱、ミニカー50万機足らずとなった。もともと総司令部の防衛用及び前線支援用の部隊はほとんどが退役将兵と義勇兵からなり、実戦はいささか不安があったが、なにしろ兵員不足もいいところなので贅沢は言ってはいられなかった。

 このような戦況で多分20分も経過したのだろうか、全体の状況がほぼ見えてきた。戦場は秒速200km弱で移動しながらの戦いなので、すでに20万km以上バイアス小惑星帯に入りこんだことになる。あと、20分もすると、バイアス小惑星帯から外れるが、そうなると、俄然(がぜん)不利になるので、それまでには何としてもケリをつけたいところだ。善戦中のチターナの第3軍、コーサンビーの第6軍は支援のゼロ戦、ミニカーを得て、一気にうるさいアメーバを殲滅(せんめつ)

3軍では丸裸になった敵母艦をこちらの母艦30余隻が岩石の陰から身を大きく乗り出し残余のヤマト装甲弾を一点集中したため、さしものギラギラボールも回転を停止。しかしその間、ほんの30秒間の交戦で、味方の母艦2隻が完全破壊され、18隻は大破、戦闘不能となる。いかに巨大岩石が生命線になっていたかがわかる。それでも残りの全母艦が決死の覚悟で、穴のあいた、敵母艦に、ドーナッツ弾、ヤマト弾、超タキロンヤマト弾、長、中、短距離用レーザー、イオ、プロトン、それに通常レーザー要するに、打てるものはすべてブチ込んだ。

ギラギラボールの抵抗はやみ、自爆を避けて、支援に来たゼロ戦、ミニカーは敵母艦から、急速に退避。ギラギラボールは自爆し大きな残骸が飛び散る。どういうわけか閃光を伴わない爆発だった。

善戦との報告があった第3軍でこの状態だ。約30万余名の将兵が露と消え、負傷者も5万名近くは出たと思われる。死者に比べ負傷者が少ないのは、宇宙戦争では真空中の戦いなので生か死かのどちらかとなり、死者に比べると負傷者はかなり少ない。母船は負傷者の収容、治療も大きな任務の一つだが、せいぜい1隻当たり、5000名ほどがいい所。ミード軍の後方の医療援助があったにしても、3000隻で、せいぜい20万人の収容がやっと。第3軍だけの重傷者だけでかなり埋まってしまった。

同じく善戦を伝えられたコーサンビー担当の第6軍は別の意味で記録しておく価値があるだろう。詳細は避けるが、援軍の力を借りて、敵母艦がいよいよ爆発崩壊という段になって、50kmの巨大母艦は自爆機能が破壊されたのか、ゆっくりと分裂、20ばかりの大きな塊が四方に散った。そのため、中から生き残りのオバサン猿人の一部は武装した状態で宇宙に放り出された。1000匹は軽く超えていただろう。背中に大きな物体を背負い、口径が10cmはある武器らしきものを持っている。

これが人類が初めて見る、オバサン猿人のすがただった。宇宙に放り出されたにしてはかなりの軽装だ。連合軍はこういう個人戦の武器はなかったので、取り合えず短距離レーザーで応戦。オバサン猿人は怪光線を発射。ゼロ戦やミニカーには損害を与えるが、戦闘機、ましてや戦艦にはあまり効果はない。それにガンダムのように颯爽(さっそう)と飛行するのでもなく、ノロノロと移動するだけ。ノロノロとはいえ、秒速200kmで慣性移動してはいる。みながそのスピードなのでノロノロ見えるだけだ。はじめはレーザーで猿人を処理していたが、途中から生け捕り命令が出たため、戦闘機が接近したところ、いきなり自爆。なんのことはない背中の荷物は、爆弾だった。しかも強力で、長さ500m、径300mはある大きな戦闘機でも吹っ飛んでしまった。そこで、今度は操縦席の小窓から操縦士が衝撃波を発射し、気絶させたが、10秒ほどで、オバサン猿人は自爆。こんなことが、34回繰り返されたため、捕獲はあきらめすべてレーザーで処理。多分、猿人のからだになんらかの異常があった時に自動的に爆発するらしい。

20個余に飛び散った巨大な破片もなぜか数分後にはすべて爆発が爆発を呼び、それこそガンジスの砂粒になってしまった。敵第7母艦の爆発では爆発したままだったが、第6母艦はあくまで、敵に研究対象品を残さないためだろう。こんな風に2重、3重に自爆装置を働かせるアイデアもシステムも人類にはないだろう。

ナラダッタ、ヒデキの第7軍が苦戦の第2軍の支援に駆けつけた時には、総司令部からの支援もあって、ほぼ勝負は付いており、敵第2母艦はすでに回転を止め、第7軍が副砲からとどめのプロトン・レーザーを連続放射すると、レーザーが突き抜け、自爆。

敵第5母艦はシャープ中尉担当の第5軍相手にかなり有利に戦いを進めており、このままいけば制圧間違いなしのところまで、推し進めていた。しかし総司令部の母艦が壊滅(かいめつ)したのを聞いて、やや、浮足立ってきたところへ、次々と味方母艦が消滅の報が伝えられるや、完全に戦闘意欲をなくし、退却に転じたが、時すでに遅く、連合軍に周囲を完全に囲まれてしまった。

それでも、決死の逃走を試みたが、いかんせん、敵母艦は勝っていたとはいえ相当にダメージを受けていたので、超高速は無理だろうに、死んでもともとの気持ちで超高速の逃走を試みたようだ。そこへ、駆けつけた連合軍の総攻撃、その砲門数はおそらく万を超えただろう猛攻を受け、10秒も経過しなうちに、このような光景は二度とは見られないような美しいとさえ言える輝き光る金色と濃い藍色の閃光が全天に輝き、どうしたことか勝負は完全についたのに、祝砲を兼ねてか、砲声はいつまでも止まず、さらに各軍の司令官が止めるのもきかず、最後の砲声が止むまで、なんと5分近くかかってしまった。

こんな場面では、轟音を発するヤマト装甲弾が一番人気で、全軍のヤマト弾がスッカラカンになってしまっていた。おそらく、10万発以上が発せられただろうが、自爆装置を持たないので、ぶち当たらない限り110メガトンの核爆弾が推定10万発、100万メガトンの核が宇宙を直進するわけだ。

 

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こうして、前代未聞、人類史上最大と言われた戦争は終わった。勝ったとはいえ、我々の人的、物的被害はあまりにも大きく、戦死者400万人を超え、負傷者は80余万人、母艦の75230隻、戦艦の853000隻、戦闘機の6024000機、小型戦闘機Ψ(プシー)210(通称ゼロ戦)の50220万機、ミニ戦闘機Ω(オーメガ)1055(通称ミニカー)551320万機が消滅あるいは完全破壊を受け、残りもすべての部門で戦闘能力を保持していたのは1020%にすぎないありさまだった。母艦、戦艦の損失がいちじるしいのはオバサン軍がこの2つに攻撃を集中したためで、もし岩石群の(たて)がなかったら、あっというまに我々の軍は全滅していたと思われる。

ちなみに、敵第7母艦と対戦したヒデキ少将の第7軍だけを見ると、緒戦では損失は戦闘機26機、ゼロ戦約1万機、ミニカー約9万機のみだったが、敵司令第9母艦と対戦している第9軍への支援に向かうため、一部の母艦、戦艦、戦闘機は移動を余儀なくされたが、その時に真空砲を食らいかなりの痛手を受けたうえ、途中で第1軍への支援に変更になったためますます損傷を受け、第1軍の戦場へ着いた途端にヒデキ少将乗船の戦艦もアメーバの攻撃であやうく宇宙のチリとなりかけたほどである。さらに、第1軍のケリがつくと第4軍の支援に回ったため、ヒデキ少将所属の第7軍は敵母艦、第7軍、第1軍、第4軍、第2軍と最後に第5軍の支援に周り、まさに阿修羅(あしゅら)のごとき活躍だったといえよう。

戦いが終わって見ると、ナラダッタ大将旗下の第7軍は母船12隻、戦艦125隻、戦闘機1300余機、ゼロ戦約36万余機、ミニカー約230万余機を失ったが、これでも全軍のなかでは最小の損害だったのだ。第7軍の残存戦力の中で戦闘力のあるのは50%を超え、この値も飛びぬけて高い戦闘力保持率だったのだ。

 

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 勝ったとはいえ、あまりにも被害が大きすぎたため、祝勝会は止めになり、そのかわり、1年後の戦勝記念日に盛大な祝勝会がアンドロメダのトリトンと天の川の各地でいっせいに催された。

 その間に、オバサン軍はまた攻めてくるのは間違いないことなので、早急に、対策を講じ、実行することが連合軍の元帥会議で決められた。その詳細はまたの機会にお話ししよう。その後、ヒデキ少将は破格の昇進をし、元帥格の大将を付与されたが、例によって技術大将なら受けましょうと主張し、元帥格の大将(技術)なった。元帥格ということは世界に30人ほどしかいない元帥会議に出席の資格を持つが、別段、出席を強制はされないということで、本人も、まだ1度も出席したことはない。

 みんなから祝福されても本人が言うには「なに、魚屋のおっさんだって、大将だもんね。」がヒデキ大将の口癖である。