4)なんだかわからない惑星

 

 翌朝から丸3日間、この惑星トリトンの有名な博物館や名所をいろいろ見学させてもらったが、それをいちいち記述していては、それだけで数ヵ月を要するだろう。ましてや、主だった名所だけでも何百とあるのだ。地球の名所でも3日間で見るのは不可能なのである。しかも今、私が見聞していることは地球に着いたとたんに忘れてしまうし、記録も消滅するというのだから、何をしにこんなところまで来たのかわからないことになる。

 あ、そうそうキャノンで写した写真だけは残ると言われたのがせめてもの救いだが、白黒でこの大宇宙をどこまで伝えることができるだろう。

 「さて、アンドロメダに来てもらったわけはですね、わたしが妻子に会うということも目的のひとつだったのですが、本当はわたしの宇宙船で20億光年離れた母船の近くにあるシルバーボールというものを見てもらいたかったからですよ。」

 シルバーボールについては後で詳述するが、要はこの8000億光年の大宇宙の現象のほとんど全ては、すでにそのボールのなかに記録されており、いまも記録が追加されつつあるというのである。

 「途中、面白い惑星を発見したのですが、まだ一度も行ったことがないので、そこへも一緒に行きましょう。」ということで自宅から2000キロも離れた基地に向かった。そこにある直径300メートル、高さ100メートルくらいの円盤状の物体が彼の愛用の宇宙船「ユカワ号」である。彼の名前も20世紀の偉人、湯川秀樹からとったのだが、この宇宙船もそうだ。

 名前は名誉あるものだが、その実、かなり旧式の宇宙船で、仲間内からは「田舎(いなか)のバス」といわれている。あの20世紀の名曲、中村メイコのヒット曲「田舎のバス」が由来である。秀樹君がよく口ずさんでいるのが原因らしい。

この円盤「田舎のバス」いや、もとえ「ユカワ号」は地面に直接ボデーがピタッと着いており、まるで鏡もちさながらだ。ロードスターがゆっくり接近するとドアがスーと開き、直接格納された。宇宙船はどれでも圧縮設計になっており、みかけは直径300メートルでも中は最大500倍くらいは拡張できるので、実質上は直径150キロの巨大円盤というわけである。周りを大草原や、森林、湖などで囲み、乗員のストレスをやわらげるのが目的である。

 たとえば、あなたがオーストラリアのグレイトバリアリーフでダイビングしたいと思えば、ボタン一つで広大な海が出現し、潜水することもできるというわけだ。海の中にはもちろん、様々な魚や生物が存在し、実際に捕って食べることができるのである。

「ユカワ号」の乗員は通常16〜20名であるが、今は長期休暇でそれぞれバラバラになっているため、今回は船長である秀樹君と私の2人だけである。しかし人型ロボットが500体ほどが船の操縦から、メンテナンス、医療、食事などなんでもやってくれるので全く不自由はないとのこと。

 また、オランダのフノーシャー氏の発明による錠剤を飲めば、その期間は性欲を抑えることができるそうである。まあ。ロボットとセックスできない事もないが、そのてのロボットはかなり高価なため、よほどのスキ物でない限り、購入することはないとのこと。それにこういうタイプのロボットはウンチもするし、昼寝もするし、おまけに浮気までするというかなり人間的な感情もあるのでトラブルのもととなるようだ。秀樹君もまじめな顔をしているが、過去にはいろいろあったのかも。

 わたしも勧められて、なんでも経験と、かなり迷ったが一応おことわりしておいた。出発に先立ち、ロボット全てをチェック。これは別にチェック用ロボットがやり、宇宙船のメカも全てロボットがやり、人の出る幕はほとんどないというのが実態である。

 ロードスターが到着した時は出発進行O.Kということになっていた。操縦席らしいところに2人はすわり、ほかに5体の人型ロボットが席に着いた。人型ロボットと書いたが、ほかにも犬や猫のようなペットロボットや、さまざまな形をしたメンテナンス用ロボットがある。

 面白いのは2才から5才くらいの子供ロボットまでおり、こちらはアチコチ歩き回って遊んでいるだけだそうだ。時には操縦席に入っていたずらまでする。なんでこんなムダなことをするのかと聞くと秀樹君は笑いながら、

「宇宙空間では、何の意味もないムダというのは大事なことなのですよ。ま、船長によっては置かない人もいますがね。」ということであった。

 「さあ、みんな席に着いたかな。それじゃ、ボブ、スタートだ。」ボブと呼ばれたPPA6と書かれたワッペンを胸につけたハンサムなロボット君が、

O.K船長、スタートします。」と眼前の複雑なスイッチを4つ、5つ押すと、360度の視界が広がる景色がゆっくりと下降し、ものの10秒するかしないかのうちに、スッと消え、また例の暗黒の宇宙となってしまった。

 「この『ユカワ号』は旧式ですが時速200万パーセクまで出せますよ。2週間ほどで20億光年先の母船に着きますから、それまではリラックスしていきましょう。」

 「もっとも、2日後に見せたい星がありますので、そこに立ち寄りましょう。さあ、それでは船内をご案内しましょう。ざっと見て回ると1時間ほどなので散歩にはいいですよ。ボブ、あとをよろしく。」と言って席を立った。

 「ボブは副船長でね、まあ、彼がほとんどやってくれますよ。何しろ、みんな24時間休みなしで働いてくれますからね。」それから小1時間ほど、それぞれの部屋やメカを見せてもらったが、それを簡単に述べるだけでも数日は要するのでみなさんに伝えることはやめておこう。

 わたしが興味があったのは彼の車庫で、ロードスターのほか、カワサキのバイクで650ccと言うのがあった。当時Wという名だったそうであるが、なんだかW1に似ているが、何か違う。よく聞くと、20世紀もおわりにW1のリバイバルとしてつくられたそうである。そのほか、トヨタS800なんてかわいらしい車もあった。

 わたしも広島市内に出かけた時、友人に頼み込んでむりやりW1に乗ってクラッシュしたにがい経験があるので、Wには非常に興味をもったね。その話をすると、

「そうですか、それは面白い、ではあとで2人で走ってみましょう。大草原をバイクで走るってのはオツなものですよ。」

 というわけで、彼はオリジナル、私はコピーのWに乗り、モンゴルの大平原やグランドキャニオンを舞台にみっちり操作方法を教えてもらった。ものの半日もしないうちに空中を飛んだり、宇宙空間でのいろいろな防御走行もできるようになった。

 あとは実際に宇宙空間で光速走行をやってみるだけだ。このカワサキWは光速までしか出ないので、結構不便なのだそうだ。それにしても光速で走るバイクが遅いから不便とは・・・。

 こうして2日間はあっという間に過ぎ、彼のいう変わった惑星に近づいた。そこは現地語で「?????」といわれる、全く聞き取れない言語を話し、われわれの文字では表記できない文字(あえて言えば立体文字か)を使用しているので、その星を秀樹君は「サンタ」と名づけている。サンタクロースのサンタではなく、ラジオ番組の「おらー、三太だ」のサンタらしい。さすが20世紀の日本を専攻した秀樹君らしい。

 で、その惑星から100万キロほど離れたところで船を止めた。「このくらいの距離ならロードスターよりカワサキのほうがいいでしょう。」ということで、自動走行で船を出る。5体のボデーガードロボットが鉄腕アトムよろしく、空中を舞いながら追ってくる。車体の周りはシールドされているので、ぐんぐん惑星が近づいてくるのに、バイク自体何の変化もない。そうしているうちに大気圏に突入したらしいが、顔に風がそよとも吹かない。

惑星そのものは地球というより火星に似ており、赤茶けた感じで海や森林らしいところは合わせても10分の1もないだろう。雲らしいものもほとんど見当たらない。30キロくらいの高度で5分ほどかけて惑星を一周した。途中、高さ30キロ近い山があり、地面すれすれになるところがあったが、自動走行のため、たくみに避けてくれた。あちこちに巨大都市が点在しているようで、そのうち最も広大な都市の郊外らしいところに着陸することにした。

ゆっくりと着地して、データ通りの大気であることを確認すると、秀樹君は「シールドを解除してください。ふつうに呼吸できますよ。」というので、解除したとたんにムッと息苦しい暑さが襲ってきた。

腕にはめた計器をみながら「気温32度、湿度78%か、ちょっと暑いですが、ま、行ってみましょう。地上なのでガソリン走行に切りかえてください。」と言って、キックスタートする。彼にはこのキックスタートがこたえられないようだ。

ブルン、ブルン、と力強いエンジン音とともに、バババババーとマフラーの快音を残して都心に向かった。この2気筒のカワサキWは心臓の鼓動と一致するのか、髪の毛を突き抜ける風とともに実に気持ちがよい。虫があたるといけないのでメガネ(これも20世紀のグロテスクなものだ)をかけているが、ノーヘルで頬にあたる風は地球上のそれと大差なしだ。

しかしその風景たるや無機的というか、今まで全く見たこともない代物である。白っぽい白金色というか、やや黄色みを帯びたメタリックの銀色というか、なにしろ生まれて初めてお目にかかる色彩である。しかも白っぽい黄色の白金色、白っぽい銀色というか、とにかく風景が単一の色で、黒とか赤とか緑らしものがほとんど見られないのである。

建物も中心部に近づくにつれ2階から30階くらいのものが増えてきたが、その建物たるやただ建っているだけというように同じようなものが建ち並んで、色彩はこれまた単調で興味に乏しいというよりも「こりゃ、人類の惑星ではないな。」ということが直感できる。

歩いている物も、人というにはほど遠く、高さこそ1〜2メートルで人類なみだが、様々な金属体(2足歩行ではある)がゆっくり歩いている。乗り物らしいのは時折通るが、バスのようなものが50センチくらいの高さで浮遊走行しているくらいだ。

市街地らしいところに入ったので、バイクを降り、シールド・ロックをかけ、歩いて銀ブラすることにしたのだが、われわれが珍しくもないのか、誰も振り向きもしない。 というよりも、振り向こうにも卵型をした、それこそ卵ぐらいの大きさの頭がのっかかっているだけなのだ。

手は2本あり、ボデーはひょうたんに近いほっそりしたもので、そのボデーにバナナぐらいの太さでそれを4本つなぎ合わせたような手足がくっついていて、なんとも表現できない、こっけいな歩きをしている。

「観測によれば少なくとも80年近く、全く同じ光景が続いていて、何を目的にみんな行動しているのか、全然見当がつかないので、調査かたがた、見物しているのですが、どうも高度生命体はいないようですねー。この都会だけでも50万体のロボットが働いているようなのですが。」と話しながら80メートル幅の大通りを進んでいく。

2〜3000ほどのロボットがゆっくりゆっくり、さまざまな方向へ動いている。やがて、間をおいてガラガラガラ、ドスーンという地響きを伴った大音響が聞こえてきた。しばらく行くと、大通りに面したビルの屋上には、一辺が2〜3メートルはあろうかと思われる、氷のようなブロックがランダムに積み上げられてあり、その上を長さ40〜50メートルはあろうかという、まるまる太ったオットセイに似た動物が「ガウガウガウ」というものすごい声をだし、動き回るものだから、巨大な氷状物がドドドという音と共に地上にたたきつけられている。

すると路上の氷状物はすぐにビルの中に消えていくので、多分、また屋上に運ばれ、オットセイ君の遊び道具となっているのだろう。まわりのロボット達は何事もなかったかのように立ち止まりもしない。そういえば、この惑星で有機的な生命体らしい物を見たのはこのオットセイ君だけだった。色もほかの白っぽい金属色のなかでは、すこしだけ黒く、周りのものとはっきり区別できた。

しばらく2人はあ然として、道の真ん中でこの光景を見ていた。

「一体、あのオットセイのような動物は何をしているのですかね。」

「何をしているのか、こちらが聞きたいですね。少なくとも、観測を始めた80年前から、ああやっているのですからね。」

「えー、80年も。ということは少なくとも生身の動物ではないですね。」

そんな話をしていると、うしろから知らないうちに、これまた巨大ナマコこのような怪物が、道幅いっぱいに迫ってきたので、秀樹君はわたしの服に手をやり、肩のあたりを押した。

「シールドをかけました。」と言う。直後に、巾50メートル、高さ30メートルはあろうかと思われるナマコ君がわれわれの頭上におおいかぶさってきた。長さは200メートルはあるだろう。「わー、つぶされる。」と思っておもわず頭を抱えたが、なんの衝撃もない。

ふと目を開くと、なんと中はがらんどうで、気味の悪いメタリックなぬめりが、半円形の空間を保ったまま、移動していき、ものの30秒もしたろうか、ナマコ君は通り抜けて行った。ご丁寧にもおしりのあたりは大きなブツブツがあり、本物のナマコそっくりである。

 「あれは何ですかね。」

 「さあー、あの物体も同じ時刻に同じように80年前から動いているのですよ。それにシールドは不要でしたね。勝手に空洞になったようですから。」

 「どうも夢を見ているとしか思えませんね。」と私は何度もポケットの中で太ももをつねったが、やはり痛いし、先ほどから虫歯も痛み出していたので夢ではなさそうだ。

 「今から、この惑星の中心部ともいうべきビルに行きますが、そこに行けばなにかわかるでしょう。」ということで、中央通りから左に入り、階段のようなものを登ると、やがて米軍のカマボコ兵舎をドーンと大きくしたような長大な建物に出会った。

 外側の通路のようなものに沿って歩くと、ポツンポツンと約30メートルごとに、丸い小さな窓のようなものが見える。先ほどから、様なもの様なものと何度も書いているが、そう書くしか説明できないのである。

 一体、何のためにそんなものがあるのかわからないのだから。一例をあげると、階段の様なものと書いたが、これとて、すんなりした、角張った階段ではなく、まともに歩けば必ず滑り落ちる、つるつるして丸みをおびたもので、そばにある棒や、ビルの突起物につかまりながら、ようやく登ってきたのだ。

 一体、誰が、こんな所を歩くだろうか。少なくとも、人間の歩くところではない。ボデーガードはもう面倒なのか、先ほどから、空中を飛びながらついてくる有様である。10個目ぐらいの窓の様な物をのぞいた時、前に突き出ている円筒状のものから、蒸気らしいものがシューシューと吹き出した。

 直径20センチほどの暗い窓状の物の奥に誰かいるようで、何かが動く気配がした。秀樹君が中をのぞきながら、コンコンとその窓をたたき、なにやら話をしていた。待つこと10分。

その間、周りを見渡すと、なんとも奇怪な風景で、白金と銀が入り混じったメタリックな都市で、上空には太陽を少し小さくした、白っぽく淡い金色の恒星が見える。空一面はこれまた白っぽいばかりで、はっきりいってまぶしくて落ち着かない。

シュワン、シュワン、シュワンという音とともに、窓のそばの壁にポッカリ穴があき、やがて、120センチほどの小さなロボットが出てきた。このロボットは道を大勢で歩いているものと違い、頭も大きな西条柿と言った感じで、少しは話が通じそうだ。

よく見ると、目らしきものが頭に等間隔で6個もついており、ありがたいことにその目はきれいなエメラルドグリーンだった。この星に色彩はないのかと思ったが、全くないわけでもなさそうだ。

通訳を兼ねたボデーガードも加わって、秀樹君しばらく身振り手振りで話をしていたが、しばらくして、あきらめたのか空をあおいだ。すると、西条柿の案内ロボットがゆっくり歩き出したのでついて行くことにした。

「どうです、話は通じましたか。」

「ぜ〜んぜん、さっぱり、チンプンカンプンです。この通訳ロボットが通用しなかったのは初めてですね。でも歩いているので、どこかに連れて行ってくれるでしょう。」

なんともあなたまかせの調査ではある。やがて、円筒状のビルのようなところに入り、歩くこと10分。そろそろ不安を感じ始めたころ、エレベーターのようなものに乗って5分くらい下降しただろうか、相当のスピードで下降したので10000メートル以上地中に入ったのでは。しかも一直線に下降するのではなく右に行ったり、左に行ったりと、あちこち回りながら下降しているようなのだ。またまた不安になり始めたころ、ようやく止まったのでホッとした。

降りて廊下のようなところを歩くこと1分で、エメラルドさんがようやく、バナナの腕で手招きするので、その中に入った。そこは長大な工場のようなところで、工場の廊下らしいところはピカピカで手すりといえば、高さ5センチほどのものしかないので、つんのめったら数キロ下の工場の床にたたきつけられるだろう。

で、われわれは2人はおっかなびっくり、歩こうとしたが、なにしろ、巾が7〜80センチほどしかなく、しかもツルツルピカピカ。とても歩けたものではないので、かっこうは悪いが、2人ともロボットにだっこしてもらい、エメラルド嬢について行くことになった。

 ボデーガードは面倒と思ったか、空中浮遊に切りかえた。のこる3体のボデーガードは律儀に歩いてついてきている。エメラルド嬢は何かしきりにしゃべているようだが、こちらは適当にうなづいていた。

どうも作業の様子からすると、工作機械といろいろなロボットそのものを作っているようで、次々と組み立てられたものが上下左右に移動していく。上下左右とも工場の端が見えないが、東洋工業(現在のマツダ)の工場を1000棟ほど、前後、左右、上下に組み合わせ、一辺が10キロを越す立方体の工場といったら、少しは想像がつくかも。

しかし騒音はほとんどなく、われわれは自由に会話ができるほどだ。ずっと左に進んで行くと、巨大な釜のようなものがあり、その先には、いろいろな鉱石らしい物が、どんどん運ばれてきていた。

その先もまだまだあるようだが、きりがないので秀樹君、先を行くエメラルド嬢の肩?をポンポンとたたき、帰りたい旨、ジェスチャーで示したが、彼女はかまわず、相変わらずゆっくり歩いていく。どうも通じないらしい。2、3度こんなことを繰り返したが、ラチがあかないので、われわれは勝手にもときた廊下を猛スピードで引き返して、先ほどの戸口のようなところで、エメラルド嬢を見たら、はるかむこうにポツネンと立っており、何かわからない様子であった。

 彼女?の帰りを待っていたら、それだけで1時間はかかるので、ほっといて帰ることにした。エレベーターのようなところで、さてどうやれば動かせるかひともんちゃくあったが、ニールと呼ばれているメカロボットが何やらゴチョゴチョやっていたら、やがてドアが開いてヤレヤレ。なるほどボデーガードは役に立つものだ。

出発地点のバイクのところにもどると、7〜8体の高さ3メートルほどの、なにやらいかめしい、一見して武装ロボットとおぼしき物体が両手をこちらに向けていた。大きなバナナが円筒状になっている感じで、どうみても発砲するぞというジェスチャーだ。まず通訳ロボットがしゃべりながら、彼らに近づいたら、その足元にむけて、手からなにやら光ったかと思うと、金属様の道に穴があき、すこし煙が上がった。

あきらかにわれわれを捕らえるか、破壊しようという気のようだ。

「どうします、船長。」とニールがいうので、

「止むをえん、腕を吹き飛ばせ。」というがはやいか、5体のボデーガードは両眼からレーザーようのものを発し、あっというまに、7〜8体の武装ロボットの両腕が宙に舞った。

それでも隊長らしきロボットはなおも接近するので、通訳ロボットのポールがすかさず、そのロボットの片足を吹き飛ばしたものだからドドーと前につんのめって倒れた。あとのロボットは抵抗せず、突っ立ったままなので、早々と2人はカワサキに乗り、そこを離脱した。そこで一句。

 

話しても むだなときには 吹き飛ばせ 

 

「彼らを作った知的生命体は多分遠い昔にほろびたのだろう。そして、彼らはロボット自身でロボットを生産し、全く同じ生活を繰り返しているのであって、生きる目的はないのだろうね。あったとしても、ただ継続することが目的なのかも。おそらくあの状態で数万年以上同じことをしているのだと思うね。蟻の生活と全く同じということで、進歩は全くないと思う。」

というのが帰ってからの秀樹君の感想だった。それにしても、やさしいだけの人だと思っていたが、やはり船長だけあって、やるときはやるもんだ。それでも急所をはずしたのは見事だったね。やはり部下にも船長のやさしい心情が伝わっているのだろうか。